出典
 MHCクラスⅠb 分子であるMR1 (Major histocompatibility complex, class I-related)は、MHCクラスI様関連分子とも言われているが、個人間で多様化していない (monomorphic; 単形性)という特徴を帯びている。Cardiff Universityを主とする米、豪、デンマークの国際共同研究グループは、ゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーンによって、MR1を標的とするT細胞受容体 (TCR)を探索し、MR1を認識し癌細胞の特異的な細胞障害性をもたらす新奇TCRを発見した。
  • 新奇TCRは、血液癌細胞に加えて、肺、皮膚、血液、大腸、乳、骨、前立腺、卵巣、腎臓および子宮頸部の癌に由来する固形癌由来細胞を認識し・殺傷し、かつ、正常細胞には細胞障害性を示さなかった。
  • 新奇TCRは、粘膜関連インバリアントT細胞 (MAIT細胞)の既知のTCRと異なり、MR1の認識に、微生物由来の抗原を必要としなかった。
  • 新奇TCRは、ビタミンB関連代謝産物を付加していく実験から、癌細胞に特異的な代謝産物を手がかりに、癌細胞と正常細胞を識別することが示唆された。
  • 新奇TCRを発現するMR1拘束性T細胞クローンが、NSGモデルマウスにおいて、白血病を抑制し寿命を伸ばすことも確認した。
  • さらに、新奇TCRを移植した患者由来T細胞は、患者由来のメラノーマ細胞に加えて、第三者の患者由来メラノーマ細胞も殺傷した。
 癌細胞を特異的に認識する機構など、関連する分子機構を詳らかにしてく必要があるが、MR1を標的とすることで、個々人のMHC (HLA)にも癌由来組織にも左右されない汎用T細胞免疫療法の可能性が見えて来た。