1. 野生型SpCas9から標的可能領域を拡大したCas9-NGとxCas9の性能を徹底比較
[出典] High-throughput screens of PAM-flexible Cas9 variants for gene knock-out and transcriptional modulation. Legut M [..] Sanjana NE.bioRxiv. 2020-01-23

 New York Genome Centerの研究グループは今回、ハイスループットなプール型拮抗スクリーン法を開発して、野生型Cas9、Cas9-NGおよびxCas9について、多数の遺伝子座を標的とするノックアウト、転写活性化および転写抑制の3種類の遺伝子編集性能を評価した。
  • 変異を導入することでPAMの制限を緩やかにし標的可能領域を広げる改変はいずれについても、DNAの切断活性を損なっていた。
  • 3種類の遺伝子編集のモードとPAMの如何によらずCas9-NGの方がxCas9よりも高性能であった。
  • Cas9-NGに導入した変異とxCas9に導入した変異を組み合わせたCas9改変体は、Cas9-NGとxCas9に基づく転写調節因子よりも強力な転写調節性を示した。
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2.  溶原ファージに対するバクテリアの応答が、進化の過程で、タイプI CRISPR-Casシステムの欠損を誘導する
[出典] Targeting of temperate phages drives loss of type I CRISPR–Cas systems. Rollie C, Chevallereau A [..] Westra ER. Nature 2020-01-22

 溶原ファージはバクテリアに感染すると、溶菌サイクルまたは溶原化サイクルに入る。これまでに、溶菌サイクルに留めた溶原ファージ変異体 (以下、毒性ファージ)と共培養する実験において、バクテリアの内在CRISPR-Casシステムがファージを除去することが報告されている。
  • University of Exeter、University of OtagoならびにUniversité de Montpellierの研究グループは今回、タイプI-F CRISPRシステムを帯びたPseudomonas aeruginosa PA14と、野生型溶原ファージDMS3または、その毒性化した変異体DMS3vir毒性ファージとの実験系で、溶原化サイクルに入ることができる野生型溶原ファージに対してタイプI CRISPR-Casは無力であることを示した。
  • 溶原ファージが再感染した場合、それを感知したCRISPRシステムが、侵入ファージだけでなく、前の感染の際に溶原化サイクルにおいて宿主ゲノムに取り込まれていた溶原ファージ配列 (プロファージ)も標的し、CRISPRシステムがファージDNAだけでなく宿主のDNAも損傷し、SOS応答が誘導されることになる。研究グループはこの自己免疫のコストとの兼ね合いで、CRISPRシステムの放棄が誘導されるとした。
3. CRISPR/Cas9によるHDRを介したアトランティックサーモンへのin vivoノックイン実験から、HDRに伴うindelsを回避するテンプレートの条件を同定
[出典] Indel locations are determined by template polarity in highly efficient in vivo CRISPR/Cas9-mediated HDR in Atlantic salmon. Straume AH [..] Edvardsen RB. Sci Rep. 2020-01-15

 Institute of Marine Research (Bergen)の研究グループは、CRSIPR/Cas9が誘導するHDRを介して、slc45a2遺伝子にFLAGタグをノックインする実験を、3種類のODN (センス鎖/アンチセンス鎖/二本鎖)と、3種類の短い相同アーム (24/48/84 bp)について行い、HDRの効率は相同アームの長さに依存せず、テンプレートの濃度に依存し、F0胚において完全なHDRを27%の効率で実現した。

 Indelsの発生を伴った不完全なHDRであった事例の解析から、indelsの発生がテンプレートの極性に依存することを見出し、修復は、DNA合成依存的単鎖 DNA アニーリング (synthesis-dependent single-strand annealing: SDSA) を介して進行するとした (Figure 4引用下図参照)。SDSA
4. [プロトコル] CRISPR技術を介したノックインにより安定したヒト変異株を作出する
[出典] Engineering Mutation Clones in Mammalian Cells with CRISPR/Cas9. Huo Z, Tu J, Lee DF, Zhao R. Methods Mol Biol. 2020-01-15
The University of Texas Health Science Center at Houstonの研究グループからの報告:CRISPR技術によって、H9ヒト胚性幹細胞株のTP53の第7エクソンに点変異 (R249 to S249)を誘導する実験プロトコル (TP53を標的とするCRISPRシステムの設計; H9細胞株へのデリバリー法とクローン選択法; 検証)

5. [レビュー] 遺伝性心筋症の理解と治療のためのゲノム編集
[出典] Genome Editing for the Understanding and Treatment of Inherited Cardiomyopathies. Nguyen Q, Lim KRQ, Yokota T. Int J Mol Sci. 2020-01-22

 University of Alberta/The Friends of Garrett Cumming Research & Muscular Dystrophy Canadaの研究チームによるレビュー:拡張型心筋症をはじめとする各種心筋症およびDMDなどの疾患に伴う心筋症の解説;ゲノム編集の応用 (in  vitro/in vivo 心筋症モデル作出;病態生理の研究;TALENまたはCRISPR/Cas9を介した関連遺伝子編集による療法開発の試み;DMDにおける心筋症のCRISPR療法研究 (ヒトiPSCモデル、動物モデル);心筋症研究に応用可能なCRISPRゲノム編集の進展;展望

6. [特許公開] AAV-CRISPRを介してグリオブラストーマのドライバー遺伝子を同定
[出典] US20200010903A1 AAV-Mediated Direct In vivo CRISPR Screen in Glioblastoma. 
7. CRISPR/Cas9 KOスクリーニングによりDNA損傷応答 (DDR)関連遺伝子と薬剤との相関を探った
[出典] CRISPR/CAS9-based DNA damage response screens reveal gene-drug interactions. Su D [..] Chen J. DNA Repair. 2020-01-16.

 The University of Texas MD Anderson Cancer Centerの研究グループの報告:293A細胞において、DDR関連遺伝子365種類を標的とするgRNAライブラリに基づくCRISPRドロップアウトスクリーニングにより、DDRを標的とする低分子に応答する遺伝子を同定;POLE3またはPOLE4の欠失が、ATR阻害剤、PARP阻害剤およびカンプトテシンに対する感受性を高めることを発見;また、TP53の有無がスクリーン結果に影響しないことも同定

8. 灰色かび病をもたらす糸状菌Botrytis cinereaの高効率多重ゲノム編集を実現
[出典] CRISPR/Cas with ribonucleoprotein complexes and transiently selected telomere vectors allows highly efficient marker-free and multiple genome editing in Botrytis cinerea. Leisen T [..] Hahn M. bioRxiv. 2020-01-20

 University of Kaiserslautern, RWTH Aachen University, Syngenta Crop Protection AGは今回、B. cinereaに最適化したCas9-sgRNAをRNPをプロトプラスト形質転換することで、NHEKおよびHRを介したB. cinereaの安定したゲノム編集を実現した。
  • 60 bpの長さの相同アームを含むDSB修復テンプレートを利用することで遺伝子ターゲッティング効率>90%を達成した。
  • さらに、1対のテロメア (pair of telomeres, pTEL)を帯びたプラスミドが糸状菌に効率よく形質転換され、自律複製し、選択圧力が無い状態で急速に失われていく特性を利用したセレクション法を開発し、RNPを介したゲノム編集と組み合わせることで、B. cinereaの効率的遺伝子編集を実現した (Fig.5 引用下図参照)。PTEL
  • この手法はMagnaporthe oryzaeのゲノム編集にも有用であった。
9. [レビュー] 機能解析と目的とするRNAiとCRISPR/Cas9による植物アラビノガラクタン変異体作出するに最善の方法
[出典] The best CRISPR/Cas9 versus RNA interference approaches for Arabinogalactan https://en.wikipedia.org/wiki/Arabinogalactan proteins’ study. Moreira D, Pereira AM, Lopes AL, Coimbra S. Mol Biol Rep. 2020-01-16
 FCUPを主とするポルトガルとイタリアの研究グループによるレビュー。