[出典] Expanding the genome-targeting scope and the site selectivity of high-precision base editors. Tan J, Zhang F, Karcher D, Bock R. Nat Commun 2020-01-31

 MPIの研究グループ (F. Zhangは現在、華中農業大学 (武漢市)所属)は先行研究で、BE3の高精度化を実現し、crisp_bioでは2019年1月31日に「BE3の高精度化 (1)」として取り上げた。その一部を以下に引用する:
 "編集効率を損なうことなく高精度な1塩基編集を、リンカーの長さを固定したBE3-PAPAPAPと、C末端を短縮したウミヤツメ由来のAIDホモログ [注*]を利用するnCDA1Δ-BE3にて実現した。前者は主としてPAMを起点として-14から-16に限定された領域 (ウインドウ)のシチジンの編集を、後者は主として-18の位置での選択的編集を実現した"
 [注*]ウミヤツメ由来のAIDホモログ:神戸大学の近藤らが開発したTarget-AIDで利用されたゼミアミナーゼ - CRISPR関連文献メモ_2016/08/06 [第1項] Target-AID: 二本鎖DNA(dsDNA)切断とドナーDNA(テンプレート)を必要としない点変異導入法

 研究グループは今回、効率と精度を維持したままPAMの制約を緩め、また、先行研究の-18に加えて、-15と-16の位置のシチジンを選択的に置換することが可能なことを示した。

PAMの制約 - Cas9変異体の利用
 PAM配列としてNGG以外を認識するCas9変異体 (VQR-Cas9, VPER-Cas9, xCas9およびSpCas9-NG)が、それぞれ、NGA、NGCG, NG/GAA/GATおよびNGをPAM配列と認識してC-to-G変換を実現し、かつ、先行研究で効果があった短縮形CDA1を組み合わせることで、バイスタンダー編集活性 [注*]が抑制されることが、示された (Fig. 1に、4種類のCas9変異体と、3種類のCDA1(全長と2種類の短縮形)を組み合わせたCBEによるC-19からC-14までの範囲のC-to-T変換効率のグラフあり)
 [注*]バイスタンダー編集活性:CBEは遺伝子治療の標的とすべきシチジンを置換するリスクを伴っている。CBEは、gRNAが認識するプロトスペーサ上の~4-17 nt幅のウインドウ内のシチジンを全てを置換対象とする。一方で、ヒト疾患関連遺伝子座の多くが (例: βサラセミアのHBBイタ;  アルツハイマー病関連遺伝子APOE4イタ; 皮膚白皮症関連TYRイタ)、CBEの標的ウインドウ内に、バイスタンダー・シチジンを帯びている。

デアミナーゼの選択とCas9との結合方式の変更
 先行研究にて、CDA1のC末端に内在するリンカー様フラグメントを利用して、合成リンカーを挟まずにCDA1を直接Cas9に結合することで、編集の効率を維持しつつ精度向上を実現できたことから、今回、CDA1以外の6種類についてnCas9への直接結合を評価した。対象としたデアミナーゼは、ヒトAPOBEC3A (GenBank accession number NM_145699)、ヒトAPOBEC3B (NM_004900)、ヒトAPOBEC3G (NM_021822)、ヒトAID (NM_020661)、マウスAID (NM_009645)およびアメリカナマズ (channel catfish) AICDA (NM_001200185)であったが、その中で、C-to-T置換効率が最も高く、ウインドウ幅が最も広いヒトAPOBEC3A (以下、A3A)を選択し、実験を続けた。
 先行研究のCDA1短縮効果に倣ってA3A短縮効果を診た結果、17アミノ酸を削除したA3AΔ182-BE3が、C-15とC-16の位置のシチジンを特異的に置換することを見出した。全長および短縮形A3A、ならびに、GehrkeらのA3Aに変異を導入して最適化したシチジンデアミナーゼ (eA3A)によるBE3を構築し、酵母のCan1イタ遺伝子にて比較評価した結果、Fig. 3引用下図にあるように、A3AΔ186-BE3の位置選択性と置換効率が高いことが示された。Fig. 3

オフターゲット編集
 A3A-BEsがRNAレベルでトランスクリプトームワイドでオフターゲット編集が発生するが、A3AにR128AまたはY130Fの変異を導入することで、抑制可能なことが報告されていた。今回、これらの変異導入の影響を評価し、Y130Fの変異導入が置換効率とウインドウ幅に影響しないことから、オフターゲット置換を抑制する観点から、A3A(Y130F)Δ186-BE3を推奨するとした。

BEs選択の手引
置換標的とするCの位置と配列のコンテクスト、バイスタンダーCの有無を手がかりとして、最適なBEsを選択する手がかりとなる表がTable 1 にまとめられている (下図参照)。

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