1. 欧州特許庁 (EPO)、Broad研の特許 (EP2771468)を取り消し
[出典] EPO officially cancel the Broad Institute's CRISPR patent. Collins Y. BioNews 2020-01-20
  • Broad研の2012年米国特許申請時に発明者として加わっていたロックフェラー大学のLuciano Marraffiniが、その後の米国と欧州における特許申請には発明者として含まれていなかったことから、2012年の米国特許申請は、2012年にまで申請を遡るためのエビデンスにならない、ひいては、特許の新奇性が成立しない、という論理での取り消しが、決定した。
  • 今回の取り消しがBroad研の欧州特許に及ぼす影響については、JUVE Patent Newsletterに詳しい:EPO revokes Broad Institute patent – but it’s just the beginning for CRISPR-Cas. Sandys A. JUVE Patent Newsletter. 2020-01-17.
2. scMAGeCK:CRISPRスクリーンとscRNA-seqの結果から多重なフェノタイプと相関する遺伝子群を同定
[出典] scMAGeCK links genotypes with multiple phenotypes in single-cell CRISPR screens. Yang L, Zhu Y [..] Zhang J, Li W. Genome Biol 2020-01-24. (Linking genotypes with multiple phenotypes in single-cell CRISPR screens. bioRxiv 2019-06-03)
  • Genome Biology論文は、bioRxiv投稿をもとに「crisp_bio 2019-06-05 scMAGeCK:CRISPRスクリーンとscRNA-seqの結果から多重なフェノタイプと相関する遺伝子群を同定」にて紹介済 
3. ディープ・ゲノム・プロジェクト宣言 - ヒト遺伝子に対するマウス・オーソログ遺伝子全ての機能アノテーションを目指すプロジェクト
[出典] The Deep Genome Project. Lloyd KCK, Adams DJ [..] Brown SDM. Genome Biol 2020-02-03
  • 5ヶ国12機関20研究室からなるInternational Mouse Phenotyping Consortium (IMPC)はこれまでに、ES細胞における相同組換えとCRISPR/Cas9技術によって作出した変異マウスのフェノタイピングにより、下図 (Fig.1から引用)、Deep Genome Project
    ヒトホモログのうち6,255遺伝子の機能アノテーションを完了し、これから2年間に2,925遺伝子の機能アノテーションを完了する予定である。
  • ディープ・ゲノム・プロエジェクトでは、~9,000種類のヒト遺伝子オーソログの機能アノテーション完成、ノンコーディング・ゲノムの機能アノテーション、機能アノテーションの臨床情報へのトランスレーション、遺伝変異の作用の迅速同定と機能試験の臨床判断への組み込みの4つの目標達成を目指す。
4. 小Maf群転写因子MAFG-lncRNAが、栄養状態と肝臓糖代謝を紐付ける
[出典] A MAFG-lncRNA axis links systemic nutrient abundance to hepatic glucose metabolism. Pradas-Juni M [..]  Vallim TQA, Kornfeld JW. Nat Commun 2020-01-31
  • デンマーク、ドイツ、イスラエル、トルコ、米国ならびに日本の国際共同研究グループは、糖尿病患者由来肝臓組織とモデルマウスのRNA-seq解析から、栄養過多・再摂食と絶食がlncRNAsの発現にそれぞれ亢進と抑制をもたらすが、タンパク質に翻訳されるmRNA発現にはそうした影響を与えないことを見出した。
  • 続いて、lncRNAとmRNAのプロモータ領域のin silico解析、シストローム解析 [*]ならびにMAFG機能獲得解析により、栄養過多・再摂取ではMAFGを介してlncRNA発現が抑制されるとした。さらに、MAFG欠失の影響と、LincIRS2を標的とするCRISPR-Cas9ノックアウトまたはRNAiノックダウンの効果から、標題を裏付
  • [*] crisp_bio 2019-11-22 シストローム (cistrome)の必須性を、ゲノムワイドCRISPRスクリーンで読み解く
5.  遺伝子編集の安全性を高めるCRISPRキルスイッチ
[出典] [NEWS FEATURE] The kill-switch for CRISPR that could make gene- editing safer. Dolgin E. Nature 2020-01-15.
[crisp_bio記事] Natureの記事に沿って、関連する研究論文とcrisp_bio過去記事へのリンクを以下に列記
 天然のキルスイッチanti-CRISPR
低分子キルスイッチ
 (Cas9が免疫応答のリスクを伴うと同様に、anti-CRISPRタンパク質も同じリスクを伴うことから低分子を探索)
  • 2019-05-04 蛍光偏光法を利用したSpCas9活性アッセイ法を開発し、SpCas9の可逆的調節を可能とする低分子を同定
microRNAによる組織特異的キルスイッチ
  • CRISPRメモ_2019/04/17 - 2  [第3項] マイクロRNAによりanti-CRISPR遺伝子の発現を細胞特異的に調節することで、細胞特異的なCas9ゲノム編集を実現
  • CRISPRメモ_2019/07/09 - 2 [第9項] Cas9の細胞腫特異的活性化を、細胞腫特異的なmiRNAに応答するanti-CRISPRタンパク質の発現を介して実現
  • CRISPRメモ_2019/08/28 - 3[第1項] CRISPR-Casの組織特異的in vivoゲノム編集を、anti-CRISPRタンパク質 (Acr)ならびにAcrの活性を阻害する組織特異的miRNAで実現する (マウスでも実証)
 核酸キルスイッチ
 Anti-CRISPRによる遺伝子ドライブのキルスイッチ
  • CRISPRメモ_2018/03/09 [第1項] SpCas9活性と遺伝子ドライブを抗-CRISPRタンパク質 (AcrIIA2; AcrIIA4)によって調節する:酵母での実証
  • CRISPRメモ_2018/09/25 [第1項] 性決定に関与するdoublesex遺伝子を標的とする遺伝子ドライブによりハマダラカのケージ内集団絶滅を7-11世代で実現 (未発表であるが、anti-drive個体の導入による遺伝子ドライブの停止を実現)
 バイオセーフティ/バイオセキュリティ観点からのCRISPRキルスイッチ
  • 2017-05-04 CRISPRニュース:DARPA (国防高等研究計画局)、“Safe Genes”プログラムを企画し課題募集 (今回記事で取り上げられた研究者参画)
 Anti-CRISPRの基礎研究への利用
  • Anti-CRISPRタンパク質でdCas9-Tet1を停止した後のエピゲノムの状態を確認: CRISPRメモ_2018/04/25 [第1項] [News & Views]エピゲノム編集による遺伝子変異疾患治療 (anti-CRISPRによりdCas9-Tet1エピゲノム編集を停止後、エピゲノム編集の結果が継続することを確認)
  • Anti-CRISPRタンパク質を帯びたファージを利用して、S. thermophilusのCRISPR−Casシステム以外の防御機構を探った: A mutation in the methionine aminopeptidase gene provides phage resistance in Streptococcus thermophilus. Labrie SJ [..] Moineau S. Sci Rep 2019-09-25
 Anti-CRISPR関連crisp_bio記事