出典
  • PERSPECTIVE "Knocking out barriers to engineered cell activity" Hamilton JR, Doudna JA. Science 2020-02-06.
  • RESEARCH ARTICLE "CRISPR-engineered T cells in patients with refractory cancer" Stadtmauer EA, Fraietta JA [..] Lacey SF, June CH. Science 2020-02-06.
  • BLOG "Cutting-edge CRISPR gene editing appears safe in three cancer patients" Couzin-Frankel J. Science 2020-02-06 2:00 PM.
  • crisp_bio 2019-11-07 CRISPR/Cas9を利用するCAR-T療法の治験を、慎重に進めるペンシルベニア大学
背景
  • ペンシルベニア大学は、CRISPR-Cas9にて遺伝子編集を加えたCAR-T細胞療法について、安全性と実現可能性 (feasibility)を確認するための第I相試験を2019年4月から開始し、同年12月に一連の学術集会で途中経過を報告してきたが、今回、Science誌オンライン版で報告するに至った。
  • ペンシルベニア大学のCAR-T細胞は、Cas9-sgRNA RNPをエレクトロポレーションすることで患者由来T細胞からT細胞受容体 (TCR)鎖のTCRα (TRAC)とTCRβ (TRBC)およびPD-1 (PDCD1)をノックアウトし、加えて、レンチウイルスによる癌細胞特異的抗原NY-ESO-1を標的とするTCR遺伝子をデリバーしたT細胞 "NYCE細胞"を自己輸血する [PERSPECITVEのFig.1 に簡明な模式図あり]。
  • TCRα/βのノックアウトは内在TCR鎖とNYCE TCR鎖との間のミスペアリング防止を、PD−1ノックアウトはT細胞の疲弊防止を、目的としている。
RNP多重遺伝子編集T細胞の安全性
  • 第I相試験は、応募した多発性骨髄腫または肉腫の患者6名の中で、臨床試験の条件を満たした患者3名について行われた。その結果、細胞毒性は見られず、オフターゲット編集は最小限であり、≤1% of NYCE細胞が染色体転位を帯びていたがこれらの細胞は時間とともに消滅した。また、患者にはCas9に対する抗体が内在したが、NYCE細胞投与による抗体レベルの上昇は見られなかった。
  • NYCE細胞は、患者に定着し、投与開始してから長期間 (9ヶ月間)、患者から検出された。また、患者から再分離したNYCE細胞の遺伝子発現プロファイルは セントラルメモリーT細胞のそれと同等であった。
NYCE細胞の臨床所見と遺伝子ノックアウト効率
  • NYCE細胞の処方に伴うサイトカイン放出症候群あるいは重篤な副作用は見られなかった。
  • 1名について4ヶ月間腹部腫瘤の~50%縮小が見られたが、他では癌が進行し、2019年12月の段階で、その1名を含む2名は癌の進行を受けて他のがん療法を受け、多発性骨髄腫患者1名は死亡した。
  • 標的遺伝子のノックアウト効率も15-45% (TRAC 45%; TRBC 15%; PDCD1 20%)にとどまったが、T細胞の遺伝子ノックアウト効率 >90% (J Exp Med, 2018)も達成された例があり、今後改善の余地がある。
関連するcrisp_bio記事・論文・ClinicalTrials.govのエントリー
  • crisp_bio 2018-07-12 AAVに依存しないCRISPRシステム送達によりT細胞改変を加速
  • crisp_bio 2018-03-23 癌免疫療法革命 (Science誌特集) [第5項] [レビュー] CAR-T細胞免疫療法
  • CRISPRメモ_2018/01/27 [第1項] [レビュー]キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-Ts)療法と免疫チェックポイント阻害療法の併用による癌療法
  • Optimized RNP transfection for highly efficient CRISPR/Cas9-mediated gene knockout in primary T cells. Seki A, Rutz S. J Exp Med. 2018 Mar 5;215(3):985-997.
  • NCT03399448 NY-ESO-1-redirected CRISPR (TCRendo and PD1) Edited T Cells (NYCE T Cells)