[出典] A CRISPR/Cas13-based approach demonstrates biological relevance of vlinc class of long non-coding RNAs in anticancer drug response. Xu D, Cai Y [..] Kapranov P. Sci Rep 2020-02-04

 長鎖非コードRNA (long no-coding RNAs, lncRNAs)には、タンパク質をコードする転写物と重ならないクラスlincRNAs (long intergenic non-coding RNAs)が存在し(Nat Rev Mol Cell Biol, 2017)、近年、lincRNAsに新たなサブクラスvlincRNAs (very long intergenic non-coding RNAs)が認められた (PLoS One, 2018)。VlincRNAsは、~50 kbから1 Mbの長さで、細胞型または腫瘍型に特異的な発現をする。

 これまでlncRNAsの機能解析が逆遺伝学の手法により行われてきたが、非特異的な作用に由来するノイズそしてまたは捉えた表現型の転写物への紐付けが曖昧に終わる課題を伴っていた。一方で、RNA編集ツールとしてCRISPR/Cas13システム (crisp_bio CRISPR-Cas13コレクション)が近年登場した。

 華僑大学 (泉州市)の研究グループは今回、RNAiなどこれまでの手法に優る精度を期待できるCRISPR/Cas13 (LwCas13a)によって、薬剤に対する感受性に基づくRNAsのノックダウン・スクリーニングを行った。Figure 2から引用した下図にあるように、薬剤に繰り返し暴露し、生存した細胞を対象に次世代シーケンシング解析した。vlincRNA
  • ヒト慢性骨髄性白血病K562細胞に、ドキサイクリング (Dox)誘導性のLwCas13aをレンチウルスで送達しておき、gRNAをエレクトロポレーションした。K562細胞は、ENCODEのデータが豊富でかつvlincRNAsを比較的大量に発現する。また、DoxによるCas13aの活性の有る無しの実験結果の比較をコントロールに利用した。
  • 薬剤は、トポイソメラーゼIIを阻害する抗癌剤エトポシド、K562細胞が帯びているBCR-ABL癌遺伝子を阻害する抗癌剤イマチニブ  および、K562細胞に大量のvlincRNAsを誘導する低分子mirinの3種類を使用した。
  • 予備実験で、3種類のいずれかに対して発現が大きく亢進したvlincRNAs22種類とわずかに亢進した3種類の計25種類をスクリーニング対象にした。また、スクリーニング対象として、10種類のタンパク質コーディング遺伝子 (ATM, ATR, PRKDC, MRE11A, BCR-ABL, EIF4A3, ZMAT3, AMFR, FBXO44, およびLNPEP)も選択した。
  • 精度を高めるために標的に対して多重のgRNAsを用意した。28-merのgRNAを、タンパク質コーディングmRNAに対しては3~5組、vlincRNAには10組使用し、コントロールとして編集活性がほとんど失活する12-14の位置3塩基のミスマッチを帯びたgRNAを使用した。
  • スクリーニングの結果、薬剤存在下での細胞生存に、タンパク質コーディングmRNAの60% (6/10)、および、vlincRNAsの64% (16/25)が、重要であること同定した。
 今回の実験・解析結果から、CRISPR/Cas13は、タンパク質コーディング遺伝子およびlncRNAsの逆遺伝学のツールとして高感度かつ高精度であり、また、lncRNAsの機能を知ることが抗癌剤の機序解明に重要であることが、示された。