(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2017/01/05

  • Corresponding authors: 鈴木未来子山本雅之(東北大学)
  • [背景]
    • KEPA1-NRF2システムは、酸化ストレスと生体異物ストレスに対する細胞の防御システムを調節する。NRF2は転写因子であり、抗酸化、解毒および代謝に関わる酵素やトランスポーターをコードする細胞保護遺伝子の発現を活性化する。ストレスのない状態では、KEAP1がNRF2タンパク質を分解することでNRF2の活性を抑制し、ストレスを受けた状態でKEAP1によるNRF2分解促進が停止し、短時間で蓄積するNRF2が標的遺伝子の転写を活性化する。
    • 様々な癌細胞で、KEAP1を介したNRF2分解の機構が不全となりNRF2が恒常的に蓄積される現象が起きている。このNRF2の蓄積は、癌細胞の増殖を利し、また癌細胞に抗癌剤と放射線療法に対する耐性をもたらす。
  • 研究チームは今回、NRF2集積による癌細胞の化学療法と放射線療法に対する耐性を抑制することを目的として、化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングによってNRF2阻害剤を探索し、その結果、ハロフジノン(halofuginone)誘導体を同定した。
    • ハロフジノンの低毒性の誘導体を低量処方することでNRF2のタンパク質レベルが低減した。すなわち、ハロフジノンが細胞内のアミノ酸飢餓応答を誘導することで、全体的なタンパク質の合成を抑制し急速にNRF2を欠損させた。
    • ハロフジノンの処方によって、NRF2依存癌細胞の抗癌剤耐性がin vitro でもin vivo でも減弱した。