[出典] Continuous evolution of SpCas9 variants compatible with non-G PAMs. Miller SM, Wang T [..] Liu DR. Nat Biotechnol 2020-02-10

 Streptococcus pyogenes Cas9 (SpCas9)とその変異体が標的可能な範囲 (scope)は、Gを含むPAM配列に大きく制約されてきた。David R. Liuらは今回、その制約を取り払うSpCas9変異体を開発した。
  • Liuグループは、2011年に開発 (Nature, 2011)したファージを介した持続的指向性進化法PACE (phage-assisted continuous evolution) [1-2]を利用して、Cas9やCBEのPAMの制約緩和と高精度化を進めて来た。 (PACEのNature論文の第一著者が公開しているWebページの図を以下に引用)PACE
  • 今回は、PACEの新たなセレクション戦略3種類と、一定容量の培養器内に遺伝子回路を組み込んだ大腸菌を流し込みながら目的とする変異を帯びたタンパク質をコードするファージを連続して選択していくPACEを、プレートを移し替えていく非連続的な手法へ改変したPANCE (phage-assisted non-continuous evolution)を介して、NRRH, NRCHおよびNRTHの配列をPAMとして認識する3種類のSpCas9変異体 (SpCas9-NRRH, SpCas9-NRTHならびにSpCas9-NRCH)を作出するに至った [ここで、Nは任意の塩基、RはGまたはA、HはA, CまたはT、を意味する]。
  • これら3種類の新たなSpCas9変異体が揃ったことで、NRNHをPAM配列とする領域の編集が可能になった。
  • SpCas9新変異体に加えて先行研究のSpCas9-NG [3] (NGをPAMとして認識)の活性を、全てのNNNN PAMsにわたるプロトスペーサとsgRNAのペアを導入したHEK2943T細胞にて、検証した。
  • SpCas9新変異体はHEK293T細胞とヒト初代線維芽細胞で活性を示し、従来のCas9野生型または変異型では標的不可能であった領域へのindels誘導と塩基変換 (CBEとABE)を実現した。
  • 例えば、Gを含まないCACC PAMを認識するSpCas9新変異体を組み込んだABE (A:T-to-G:C)によって、これまで不可能であった鎌状赤血球症の病因変異を、病原性が無いとされている変異 'Makassar β-globin variant (HbG)'に変換することに成功した。
 SpCas9新変異体と先行研究からのSpCas9-NGおよびxCas9 [4]によって、ほとんどのNとR (AまたはG)からなるPAM配列を伴う領域が標的可能になり、ひいては、標的不可能なゲノム領域を大幅に縮小することになった。

[注] S.M.M., T.W.およびD.R.L.は本研究に関連して特許申請; Liuグループは本論文と同時に、CBEの高精度化の論文も発表: crisp_bio 2020-02-12 LiuグループによるCBE (C:G-to-T:A)の高精度化

 [関連crisp_bio記事]
  1. 2019-07-24 一塩基編集 (CBE)、ファージに依存する持続的進化法 (PACE)により、進化続く
  2. CRISPRメモ_2018/11/19-2 [第9項] [FORUM]ファージを介した持続的定向進化(PACE)を利用したC•G→G•C塩基編集法開発を解説
  3. 2018-08-31 SpCas9-NG:SpCas9の標的範囲をさらに広げる合理的な変異導入
  4. 2019-10-14 xCas9のPAM拡張と高精度の構造基盤 (2)2018-03-02 xCas9:PAMの拡張とオフターゲット抑制を両立