[出典] CRISPR-Cas12a exploits R-loop asymmetry to form double strand breaks. Cofsky JC [..] Doudna JA. bioRxiv 2020-02-11.

 Cas9は、crRNAに対する相補鎖 (標的鎖/Target strand, TS)をHNHドメインで切断し、非相補鎖 (非標的鎖/Non-targeted strand, NTS)をRuvCドメインによって切断する。一方で、Cas12aはHNHドメインを持たないが、単一のRuvCドメインでdsDNAの二本の鎖を順次切断する [現論文Figure 1引用下図参照]。Figure 1
 Cas12aのdsDNA切断機構を対象にさまざまな解析が進められ、例えば、2019年にUniversity of ZurichのD. SwartsとM. JinekがFnCas12aの構造解析と生化学的解析および先行研究の知見を総合して、Cas12aがdsDNAを切断する統合モデルをMolecular Cell誌に発表した [crisp_bio記事]。

 Molecular Cell論文の図6に、Cas12aのPAM認識から、コラテラルssDNA切断までのモデル図がまとめられている:(a) Cas12aのPAM認識 → (b) TSのシード配列結合 → (c) R-ループ形成 (*)→ (d) RECローブの再配置とともにRuvCの活性部位 (グルーブ)へのNTSのアクセス可能に → (e) グルーブに結合したNTS切断 → (f) PAM遠位のdsDNAの巻き戻しとグルーブでのTSの切断 → (6) PAM遠位で切り離されたdsDNAの遊離 → (h) グルーブにてcrRNAの標的以外のssDNAのコラテラg切断 (* R-ループ形成はcrRNAの5'端から3'端に向かって進行し、これはCas9のR-ループ形成の向きと反対である)

 J. A. Doudnaらが今回bioRxivに投稿したモデル (Figure 6引用下図参照)は、結論としては、Swarts & Jinekモデルを支持する。Figure 6
  • 研究グループは、タンパク質に結合した状態のR-ループならびにタンパク質が結合していない溶液中のR-ループのコンフォメーションを化学的および蛍光法で解析し、上図の(2)から(3)にて黄色で表示されているR-ループのcRNA-3’末端に隣接するTS鎖のDNAの領域が、NTS鎖と二本鎖を形成可能であるにもかかわらず、局所的に一本鎖状態とることで (Swarts & Jinekモデル[e]の"dsDNAの巻き戻し"に相当)、単独RuvCによるssDNA切断活性が有効になるとした。
  • 研究グループはまた、溶液中のタンパク質に結合していない状態のR-ループについて、crRNAの5'端に隣接するDNA鎖は、安定したdsDNA状態を維持していることを確認し、crRNAの3'端側と5'端側のこの非対称性が、Cas12aを含むタイプV CRISPR-Casシステムの特徴である5'-リピート-3’ 向きのcrRNAをもたらしているとした。