[出典] Base Editing Promise in Treating a Mouse Model of Progeria. Davies K. GEN Genetic Engineering & Biotechnology News. 2020-02-14.

 2020年2月8-13日にカナダのバンフで開催された“Engineering the Genome” Keystone Symposium [*]でのDavid Liuの口頭発表を、Kevin Davies  がレポート

 ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群 (HGPS) の患者のほとんどが、ヒト1番染色体に位置し細胞核の完全性に関与するラミンA遺伝子 (LMNA) の第11エクソンにc.1824C>Tの変異を帯びている (Nature, 2003 [1])。このHGPS変異がプロジェリン (progerin)と呼ばれる短縮形ラミンAタンパク質をもたらし、プロジェリンが細胞内に蓄積して早老症を引き起こすとされている。

 ヒトLMNA変異修復については、この変異を導入したトランスジェニックHGPSモデルマウスにおいて、SpCas9とSaCas9によってラミンAとプロジェリンの双方の発現を抑制することで、症状が改善され、寿命な伸びることが、Salk研究所のグループと、スペインと英国の共同研究チームにより報告されていた [crisp_bio 2018-05-30: 2]。

 Liuグループは今回、ABEmax [crisp_bio 2018-05-30: 3]を利用して、LMNA変異修復を試みた。
  • はじめに、HGPS患者由来の線維芽細胞において、ABEmaxを介して変異を90%まで修復可能なことを確認した。プロジェリンのRNAとタンパク質のレべルが顕著に低下し、細胞核が正常な形を取り戻した。CIRCLE-seq [CRISPRメモ_2018/10/22: 4]での検証では、オフターゲット編集は非検出であった。
  • 次に、ABEmaxを二分割することでHGPSモデルマウスへのAAV9によるデリバリを実現した上で、用量やデリバリ時期を変えて実験を繰り返し、出産後2週間が最適時期であることを同定した (なお、ヒトHGPSは生後生後6か月〜24か月間に好発する、とされている)。
  • ABEmaxによって、大動脈を含む多重な組織でプロジェリンのRNAとタンパク質のレベルがいずれも低下し、また、正常なLMNAの発現が上昇することを確認した。大腸脈は、組織学的にも、正常に復した。
  • マウス個体としても、ABEmaxを投与しなかったマウス (7.5月齢)は早老症の症状を呈し、ABEmaxを投与したマウス (8月齢)は溌剌としていた (注: 口頭発表でビデオで紹介された)。
  • ABEmaxデリバリによる寿命も延び、出産後数日でデリバリした場合は平均して78%延びた。出産後2週間でABEmaxをデリバリしたマウスの寿命は不明である (発表時点ではまだまだ元気にしていたので)。
[引用文献とcrisp_bio記事]
  1. Recurrent de novo point mutations in lamin A cause Hutchinson-Gilford progeria syndrome. Eriksson M [..] Collins FS. Nature 2002-04-25
  2. 2019-02-24 早老症のCRISPR-SpCas9またはSaCas9による遺伝子治療 (細胞モデルとマウスモデルにて)
  3. 2018-05-30 [第1項] 塩基エディターBE4とABEを、BE4max/AncBE4max/ABEmaxへと強化
  4. CRISPRメモ_2018/10/22 [第1項] [プロトコル] CIRCLE-seqによりCRISPR-Cas9のヌクレアーゼの活性をゲノムワイドで決定する
 [注*] Keystone Symposiaからの“take-home message”を前Editas Medicine CTOのVic Myerがツイート: