[改訂履歴]
2020-03-01 SARS-CoV-2のメインプロテアーゼと阻害剤N3の複合体構造 (PDB ID 6LU7)に対応する論文bioRxiv 2020-02-27へのリンクを追加; crisp_bio 2020-03-01 "新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対してIC50 0.48μMの阻害活性を示す低分子を治験薬から発見"参照
2020-02-29
crisp_bio 2020-02-29 新型コロナウイルス:台湾、米国ならびに日本で分離されたSARS-CoV-2株の系統解析から見えたこと; "Structure, function and antigenicity of the SARS-CoV-2 spike glycoprotein" Cell誌アクセプト
2020-02-27 crisp_bio記事"
BGIの100ドルゲノムと新型コロナウイルス検出キット"へのリンク追加 (これ以前の改訂履歴は文末に移行)

[出典] Cryo-EM Structure of the 2019-nCoV Spike in the Prefusion Conformation. Wrapp D, Wang N [..] McLellan JS. bioRxiv 2020-02-15 > Science 2020-02-19; [構造情報] EMD-21375 2019-nCoV S 1 Receptor Binding Domain (RBD) "up" (3.46 Å);EMD-21374 2019-nCoV spike (S) C3 symmetry (3.17 Å); PDB 6VSB [注] 以下のテキストはbioRixv投稿に準拠

 当初、Novel coronaviruや2019-nCovと呼ばれ、国際ウイルス分類委員会によってSARS-CoV-2と命名 (bioRxiv, 2020-02-11)された新型コロナウイルスのゲノム配列は1月早々に決定された。2020年1月5日に国際塩基配列データベースにサブミッションされ、2020年2月11日に公開され [MN908947*]、その後、各地で分離されたSARS-CoV-2のゲノム配列の公開が続いている[* NCBI GenBankからの該当レコードの画面キャプチャの一部を以下に引用]。
GenBank
 1月に決定されたゲノム配列は、ほぼ同時に、各国の研究グループの間で共有されていたようである。それから1ヶ月ほどで、SARS-CoV-2に対するワクチン、抗体医薬および診断の標的となるヒト細胞に食い込むSARS-CoV-2のスパイク (S)糖タンパク質 (以下、Sタンパク質)の構造を、UTEXASとNIAID/NIHの研究グループが、Sタンパク質が宿主細胞膜に融合する前 (prefusion)のコンフォメーションをクライオ電顕法により原子分解能で決定し、2月15日にオープンジャーナルbioRxivに投稿した (2月19日にScience誌から公開)[Figure 1とSupplementary Figure 4引用下図参照]。Fig. 1.
 研究グループは、ヒト細胞膜受容体に結合する前のSタンパク質三量体の構造を再構成し、三量体それぞれが帯びている3つの受容体結合ドメイン (receptor-binding domains, RBDs)のうち1つが、受容体がアクセス可能なコンフォメーション*へと上に回転することを見出した [* 受容体がアクセス可能なコンフォメーションを"up"と、受容体がアクセス不可能なコンフォメーションを"down"と呼んだ]。

 研究グループはまた、SARS-CoV-2が、ヒト細胞膜上の受容体アンジオテンシン変換酵素2 (ACE2)に結合し、加えて、SARS-CoVのSタンパク質よりも強く結合するエビデンスを、負染色電子顕微鏡と生物物理学的解析とから見出した。さらに、これまでに報告されてきたSARS-CoV RBDに特異的なモノクローナル抗体3種類について、SARS-CoV-2には結合しないことを見出した [Figure 4引用下図参照]Fig. 4
 浙江省西湖の研究グループによるヒト細胞受容体ACE2との複合体のクライオ電顕構造
  • Structural basis for the recognition of the 2019-nCoV by human ACE2. Yan R, Zhang Y, Guo Y, Zhou Q (西湖高等研究院; 西湖大学) bioRxiv 2020-02-20.
  • crisp_bio 2020-02-21 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質とヒト受容体の複合体クライオ電顕構造
 UWとFHCRCなどによる構造・機能・抗原性解析
  • "Structure, function and antigenicity of the SARS-CoV-2 spike glycoprotein" Walls AC, Park YJ [..] Veesler D. bioRxiv 2020-02-20. > Cell誌アクセプト(Journal pre-proof)
  • crisp_bio 2020-02-22 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)の構造、機能および抗原性: SARS-CoV-2 (CODIV-19コロナウイルス)のACE2への結合親和性は、少なくともSARS-CoVと同等; スパイク糖タンパク質のS1/S2サブユニットの境界面にフーリン切断部位が位置している
[その他の構造関係情報]
  • SARS-CoV-2 and SARS-CoV Spike-RBD Structure and Receptor Binding Comparison and Potential Implications on Neutralizing Antibody and Vaccine Development. Sun C [..] Xie L. (Sinocelltech Ltd) bioRxiv 2020-02-20.
  • X-ray Structure of Main Protease of the Novel Coronavirus SARS-CoV-2 Enables Design of α-Ketoamide Inhibitors. Zhang L, Lin D, Sun X, Rox K,  Hilgenfeld R (University of Lübeckなど). bioRxiv 2020-02-20.
  • SARS-CoV Sタンパク質の構造 (X線結晶構造解析 2.9 Å) 2AJF Structure of SARS coronavirus spike receptor-binding domain complexed with its receptor.
  • [X線結晶構造解析によるSARS-CoV-2の構造情報PDB ID 6LU7 The crystal structure of COVID-19 main protease in complex with an inhibitor N3 (2.16 Å): 著者 Liu X, Zhang B, Jin Z, Yang H, Rao Z; 登録日 2020-01-26; 公開日 2020-02-05; 最終更新日 2020-02-19 (PDBから公開された構造図を以下に引用); bioRxiv 2020-02-27投稿 (crisp_bio 2020-03-01参照); [wwPDB 2020-02-05]新型コロナウイルスプロテアーゼの構造が公開されました (2020-02-05)と、PDB/PDBjのMolecular of Month / 今月の分子 [下図参照; 2020-02-19 crisp_bioに全文掲載]に解説記事あり 。COVID-19
  • 構造から見たコロナウイルス・プロテアーゼの解説 (crisp_bio 2020-02-19 RCSB PDB/PDBj「今月の分子」から転載)
  • 2000年代に発見されていたコロナウイルスNL63の構造解析: crisp_bio 2017-05-03 コロナウイルスのスパイクタンパク質のクライオ電顕解析
[インフルエンザ関連データの国際共有WEBサイトが配列に基づくSARS-CoV-2系統樹を提供]
  • 中国のCDCがインフルエンザ配列データを国際的に共有するシステムであるGISAID (Global Initiative on Sharing All Influenza Data) が、配列に基づく系統樹を随時更新している。
  • 2月10日に対話型の系統樹上で日本由来のサンプルの枝をクリックし画面キャプチャした系統樹 (左下図参照)では、華南海鮮市場で収集された環境由来サンプルのゲノム (図の中の青色の枝)と武漢からの初期の感染ヒトサンプルのゲノムがクラスターを形成することを見て取れる。2月18日の画面キャプチャを右下図に引用した。
Cluster 2020-02-18 9
[配列関係情報]
[発生源は野生動物]
  • [声明] Statement in support of the scientists, public health professionals,and medical professionals of China combatting COVID-19. THE LANCET 2020-02-19
  • 著者: Charles Calisher, Dennis Carroll, Rita Colwell, Ronald B Corley, Peter Daszak, Christian Drosten, Luis Enjuanes, Jeremy Farrar, Hume Field, Josie Golding, Alexander Gorbalenya, Bart Haagmans, James M Hughes, William B Karesh, Gerald T Keusch, Sai Kit Lam, Juan Lubroth, John S Mackenzie, Larry Madoff, Jonna Mazet, Peter Palese, Stanley Perlman, Leo Poon, Bernard Roizman, Linda Saif, Kanta Subbarao, Mike Turner)
[COVID-19関連論文データベース - WHO]
[CRISPR技術に基づく検出システムの開発]

  • crisp_bio 2020-02-15 SHERLOCK、新型コロナウイルス検出プロトコルを公開 (SHERLOCKCRISPR技術に基づく超高感度核酸検出ツール)
  • crisp_bio 2020-02-19 DETECTR、新型コロナウイルス検出プロトコルversion 2公開
[この投稿の改訂記録]
  • 2020-02-26 RCSB PDBの COVID-19 Coronavirus Resourcesへのリンクを追加; [構造情報] EMDB/PDBエントリーへのリンク追加; 「mRNAワクチンに第1相試験」記事へのリンク追加
  • 2020-02-22 UWとFHCRCなどによる構造・機能・抗原性解析などのbioRxiv投稿3編へのリンク追加
  • 2020-02-21 浙江省西湖の研究グループによるbioRxiv投稿「ヒト細胞受容体ACE2との複合体のクライオ電顕構造」へのリンク追加
  • 2020-02-20 発生源に関する声明, WHOによる論文リストなどへのリンクを追加; Science論文へのリンクを追加
  • 2020-02-18 [インフルエンザ関連データの国際共有WEBサイトが配列に基づくSARS-CoV-2系統樹を提供]を追記
  • 2020-02-17 [X線結晶構造解析によるSARS-CoV-2の構造情報] 追記
  • 2020-02-16 16:15 初回投稿