[出典] Pervasive head-to-tail insertions of DNA templates mask desired CRISPR-Cas9–mediated genome editing events. Skryabin BV [..] Rozhdestvensky TS. Sci Adv 2020-02-12. (bioRxiv 2019-03-08) 

  University of Muensterを中心とする研究グループは、CLICK [1]Eas-CRISPR [2]およびTild-CRISPR [3]に類した手法、CRISPR/Cas9が誘導する2つのLoxPサイトを帯びた長いドナーDNAテンプレートに基づくHDRを介した遺伝子ターゲッティング (ノックイン、KI)による条件付きノックアウト (conditional knockout, cKO)マウスモデルの作出を試み、設計通りの遺伝子ターゲッティングの他に、HDRそしてまたはNHEJを介してドナーssDNA/dsDNAテンプレートの多重なヘッドトゥーテールのノックインが高頻度で発生することを見出した。
  • Fig. 3引用下図のAにターゲッティングの模式図、Bに設計通りの単一コピー (SC)のノックインの模式図、Dに5'端でのHDRまたはNHEJを介した設計以外のノックイン、Fに3'端でのHDRまたはNHEJを介した設計以外のノックイン、および、CEに設計以外の多重な (ヘッドトゥーテール)のノックイン、の模式図が示されている。
Fig. 3 Table 1
  • また、Table 1引用右上図に、モデルとした6種類の遺伝子を標的とし、ドナーをssDNAまたはdsDNAとその長さを変えた10件のターゲッティングの実験にて、F1世代でのSCのマウスと、最大3コピーまでのマルチコピー (MC)のノックインが発生した例数とその機構がまとめられている。F1世代の解析から、Cas9-crRNAをマイクロインジェクションした受精卵母細胞由来のF0世代でモザイクが発生していたことが示唆された。
  • 研究グループは、通常のPCRでは想定外のノックインを検出できないが、LoxPに隣接して制限酵素認識部位を導入しサザンブロッティングすることで、設計通りのSCターゲッティング発生を判定可能なことを示した。
  • [注] bioRxiv版に準拠した記事: CRISPRメモ_2019/03/11 [第4項] CRISPR/Cas9 HDRにおいて、ドナーDNAテンプレートの多重挿入が高頻度で発生する

[引用crisp_bio記事]
  1. CRISPRメモ_2018/05/05 [第2項] コンディナルノックアウトマウスの1段階作出法’CLICK'
  2. CRISPRメモ_2017/12/22 [第1項] [プロトコル]Easi-CRISPR:長鎖一本鎖を利用してノックインマウスとコンディショナルノックアウトマウスを高効率で作出する法
  3. CRISPRメモ_2018/05/27 [第1項] ヒトとマウスの胚への効率的かつ精密な遺伝子ノックインをTild-