1. CRISPR-Cas9スクリーンの結果にp53が及ぼす影響を、野生型細胞とTP53 KO細胞の同時並行スクリーンで突き詰めた
[出典] "Parallel CRISPR-Cas9 screens clarify impacts of p53 on screen performance" Bowden AR, Morales DA, Juarez M [..] Jackson SP. bioRxiv 2020-02-20

 これまで、CRISPR-Cas9スクリーンに対して、CRISPR-Cas9が誘導する二本鎖DNA切断 (DSB)にたいするp53を介したDNA損傷応答 (DNA damage response, DDR)が及ぼす影響について議論が続いてきた [1-4]
  • Wellcome/Cancer Research UK Gurdon Instituteの研究グループは、ヒト網膜色素上皮細胞由来RPE-1細胞株の野生型とp53をコードするTP53遺伝子をノックアウトした変異型を同時並行してスクリーン(parallel CRISPR-Cas screen/以下、パラレル・スクリーン)することで、TP53が及ぼす影響を直接測定することを試みた。
  • 具体的には、Figure 1から引用した下図にあるように、852種類のDDR関連遺伝子とコントロール用遺伝子群を標的とする2重gRNAsライブラリに基づくパラレル・スクリーンを行った。TP53 1
    その結果、p53を介したDNA損傷応答がCRISPR-Cas9スクリーンにネガティブな影響を与えることを同定したが、その一方で、野生型でも変異型でも妥当な結果をもたらす実験条件も洗い出した。
[crisp_bio関連記事]
  1. 2019-11-04 CRISPR-Cas9遺伝子編集は、p53だけでなくKRASおよびVHLについても、その変異を帯びている細胞を選ぶ
  2. 2019-08-14「p53がCRISPRスクリーンに及ぼす影響」を巡る議論
  3. 2019-04-16 CRISPR/Cas9遺伝子治療におけるp53問題 (2報)
  4. 2018-06-12 CRISPR/Cas9の編集効率と癌抑制遺伝子p53の活性が相反する
2. CRISPR技術に基づいて、生細胞内でのエピジェネティック修飾を介したゲノム再編成過程の可視化を実現
[出典] "CRISPR-based Live Imaging of Epigenetic Modification-Mediated Genome Reorganization" Feng Y, Wang Y [..] Xie W, Ma H. bioRxiv 2020-02-19
  • 上海科技大学、華東理工大学、清華大学、U Central FloridaおよびUMMSの研究グループは今回、EpiGo (Epigenetic perturbation induced Genome organization)を開発し、表題を実現した。
  • 具体的には、dCas9-KRABと、2ヶ所の遺伝子座を標的とする蛍光標識したsgRNAs (CRISPRainbow [1]またはCRISPR-Sirius [2]などによるFL-sgRAN1とFL-sgRNA2)とで構成されるEpiGo-KRABによって、2ヶ所の遺伝子座のヒストンH3K9をトリメチル化 (H3K9me3)かつ可視化し、CRISPR-Cas9によってそのC末端にHaloTagをノックインすることでHP1αを可視化することで、U2OS細胞において、IDR3遺伝子座とTCF3遺伝子座がHP1α凝集体に共局在することを観察した。
  • 加えて、CRISPR標的サイト836コピーからなる19番染色体上の~17 Mbにわたる領域が存在することを見出し (C19Qと命名)、EpiGo-KRABを介して、C19Qが集積し、おそらく相分離を介して、HP1α液滴の表面を修飾することを、構造化照明顕微鏡 (3D-SIM)によって観察した。
[引用crisp_bio記事]
  1. CRISPR関連文献メモ_2016/05/08 [#1] CRISPRainbowで遺伝子座を7色に‘塗り分ける’
  2. crisp_bio 2018-10-13 CRISPR-Sirius: ゲノム可視化システムの安定化・高輝度化・多色化
3. 自己相補性アデノ随伴ウイルス (AAV)デリバリー・システムを介して、マウスモデルにおいて、CRISPR-Cas9によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)変異の修復を向上させた
[出典] "Enhanced CRISPR-Cas9 correction of Duchenne muscular dystrophy in mice by a self-complementary AAV delivery system" Zang Y [..] Olson EN. Sci Adv 2020-02-19

 体重の~40%を占める骨格筋を対象とするDMD in vivo遺伝子治療には、大量のAAVをデリバリーする必要があるが、高用量のAAVは急性の肝臓障害をもたらすリスクや、sgRNA AAVゲノムが全身投与後に選択的に欠損してしまう課題を伴う。
  • UT  Southwestern Medical Centerの研究グループは今回、SpCas9をssAAVでデリバリーし、sgRNAsを自己相補性AAV (self-complementary AAV, scAAV)でデリバリーすることで、導入効率、ゲノム編集および骨格筋と心筋の修復を向上させることに成功した。
  • また、scAAVの量はssAAVの量の20分の1で十分であった [FIg. 1引用下図参照: DMD修復戦略について(a)を、ssAAVとscAAVについて(c)を参照]。scAAV
[Olsonグループの関連先行研究]
  • CRISPRメモ_2017/12/01-02 [#2] デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)マウスモデルの作出とジストロフィン発現回復
  • 2018-08-31 CRISPRによるエクソンスキッピングが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)モデル犬でも有効
  • 2019-03-08 CRISPR/Cas9によりジストロフィン遺伝子エクソン44欠損からのジストロフィン・タンパク質発現を回復