[2020-05-20更新] STAT, 批判記事発表 "Vaccine experts say Moderna didn’t produce data critical to assessing Covid-19 vaccine" Branswell H: Modernaと協働しているNIAID/NIHがModernaのプレスリリースにコメントせず; 中和抗体が検出された8名の背景が不明 (18-55歳の中での年齢分布を始めとして)であり、その他の参加者の状況も不明; ワクチン2回接種後2週間での判定 (中和能の維持期間不明); 抗体価が回復者由来抗体を"generally"上回るとしたが、もともと分散が大きい比較対象のデータが非開示であり"generally"の含意も不明; これまでのワクチン開発においても論文発表などでのデータ開示が限定的であり、mRNA-1273の定量的データは未だ全く開示されていない。
[2020-05-19更新] Moderna,第1相試験の途中経過を公表
[出典] Moderna Announces Positive Interim Phase 1 Data for its mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus. Moderna Press Release. May 18, 2020 at 7:30 AM EDT.
健常者 (18-55歳)15名のコホート3組に、25 μg,100 μgおよび250 μgを投与し、前二者については2回目の投与後、250 μgについては1回投与後のデータ; いずれも第1回投与後15日で抗体陽転; 25 μg/100 μgについては、それぞれ4名について第2回投与後2週間 (第1回投与から43日)でのデータがあり、回復したCOVID-19患者由来血清に見られるより高レベルの中和抗体産生が見られ、副作用は100 μg投与1名に注射部位に一時的に紅斑が見られたに留まっている。NIAIDなどと共同で行った前臨床試験 (SARS-CoV-2感染マウスモデル実験)では、mRNA-1273が肺でのウイルス複製を阻止することを見た。
[参考] 
  1. "A 12- to 18-month timeline assumes that a vaccine progresses through all the various stages of testing without encountering significant issues" [出典] The Timelines and Implications for COVID-19 Vaccine" Boston Consulting Group. 2020-05-14
  2. 新型コロナワクチン 米中で相次ぎ治験入り. 化学工業日報 2020-04-22
  3. 進行中のCOVID-19ワクチン第2相試験4件 (2020-05-19に米国NLMのClinicalTrials.govを検索した結果)Phase 2
[crisp_bio 上記以前の更新履歴は、文末に移動]
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Press Release
"Moderna Announces First Participant Dosed in NIH-led Phase 1 Study of mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus" Moderna 2020-03-16; NEWS RELEASE "NIH clinical trial of investigational vaccine for COVID-19 begins" NIH 2020-03-16.
  • KPWHRIのLisa A. Jackson, M.Dが指揮する第1相試験は安全性・反応性と免疫原性を評価するための試験であり、今回は、open label study (非盲検試験)として行われる。
  • mRNA-1273の用量として、15名3組のコホートにそれぞれ、25μg, 100μgまたは250 μgの投与を予定している。
  • 参加者には、28日の間隔をおいて2回、上腕へ筋肉内注射を介して投与され、第2回投与後、12ヶ月間追跡される。
  • まず、15名2組のコホートそれぞれにおいて、4名ずつ25μgまたは100μgを投与し、その結果を受けて、2回目の投与と、残る7名への投与を判断する。さらに、この2組のコホートでの結果を受けて、3組目のコホートへの250 μg 投与を判断する。
2020-03-16に至るまでの経緯

 NIAID/NIHがModernaのmRNA-1273の臨床試験を実施する機関として選択したKaiser Permanente Washington Health Research Institute (KPWHRI)は、3月4日に「ModernaのmRNA-1273の安全性を見る第1相試験 [a] の参加者45名の募集を開始した」と発表した [b]。米国シアトルエリアの18-55歳の健常者が対象である。第1相試験で安全性を確認できれば、1,000人規模の第2相試験を開始する予定である。なお、KPWHRIは、NIHが指定したVaccine and Treatment Evaluation Units (VTEU)9機関の一つである。
[a] NCT04283461 Safety and Immunogenicity Study of 2019-nCoV Vaccine (mRNA-1273) to Prevent SARS-CoV-2 Infection.
[b] NEWS 2020-03-04: Kaiser Permanente Washington enrolling participants in first coronavirus vaccine trial. Kaiser Permanente Washington Health Research Institute (KPWHRI) 2020-03-04

 NIAID (アメリカ国立アレルギー・感染症研究所)は、クライオ電顕法によるSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質 (S)構造解析論文 [1]発表時のブログ [2]で「Sの構造情報とアノテーションは、さまざまなタイプのワクチン開発に有用, .... Moderna社がmRNAワクチンを開発中」と述べていた。
  • 2月24日になってModerna社は「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン "mRNA-1273"を第1相試験のためにNIAIDへ出荷した」と発表した [3]
  • mRNA-1273はScience論文に発表された「ウイルスの中の一部であるスパイク糖タンパク質のヒト細胞に融合前の構造」をエンコードするmRNAであり、ヒト細胞において無害なS糖タンパク質として発現し、抗原としてヒト免疫応答を活性化することが期待される。
  • mRNA-1273は、標的配列の同定から42日でmRNA-1273に至った。臨床試験が順調に進めば、今後のS糖タンパク質の変異への迅速対応をも期待させる。
  • mRNA-1273は、ワクチン開発支援を目的として2017年のダボス会議で設立されたCoalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI) からの資金を受けたModernaとNIAIDのVaccine Research Center (VRC) のmRNAワクチン研究開発の蓄積と共同研究によって実現した。
[引用記事とブログおよびmRNA参考記事]
  1. crisp_bio 2020-02-16 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)のクライオ電顕構造; Cryo-EM Structure of the 2019-nCoV Spike in the Prefusion Conformation. Wrapp D, Wang N [..] McLellan JS. bioRxiv 2020-02-15 > Science 2020-02-19
  2. "NIH Scientists Identify Atomic Structure of Novel Coronavirus Protein" NIAID Now 2020-02-19.
  3. Moderna Press Release "Moderna Ships mRNA Vaccine Against Novel Coronavirus (mRNA-1273) for Phase 1 Study" 2020-02-24 6:04 EST
  4. "Unlocking the potential of vaccines built on messenger RNA" Dolgin E. Nature 2019-10-16.
  5. "mRNA 医薬開発の世界的動向" 位髙啓史, 秋永士朗, 井上貴雄. 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス   Vol. 50 No. 5 (2019)リンクを解除
[更新履歴]
# 2020-02-26 初稿
# 2020-03-11 追記
# 2020-03-17 タイトルを「開始へ」から「開始」に改訂し、Moderna社のPress ReleaseとNIHのNEWS RELEASEとを引用 [*]