2020-09-09 更新: モデルナ社、ワクチン開発企業9社の共同誓約に加わる ("crisp_bio 2020-09-09 新型コロナウイルス: ワクチン開発にあたり9社のCEOが誓ったこと"参照)

2020-08-28 更新: モデルナ社、8月26日にCDCの予防接種実施に関する諮問委員会 ( Advisory Committee on Immunization Practices; ACIP)にて、第1相中間解析から高齢者コホート(56-70歳10名と71歳以上10名)における安全性と免疫応答など報告
[出典] Moderna社のプレスリリースと発表資料 "mRNA-1272 Vaccine Against COVID-19: Phase 1 Interim Analysis of Older Adult Cohorts (ages 56-70 and 71+)"
  • mRNA-1273 100μgを28日の間隔をおいて2回接種
  • 高齢者コホートでも概ね安全であり、 忍容性が良好 (well-tolerated)であった。
  • 中和抗体の活性とT細胞応答は、以前に公表した55歳までコホートの結果と整合した。
  • コホート 全員に、一貫して、回復者血清にみられる中和抗体の2-3倍の抗体価を示す中和抗体が誘導された。
  • Th1細胞応答とTh2細胞応答のバランスはTh1細胞応答に偏りが見られた。
  • 第3相試験のコホートの規模は、2020年8月25日時点で、15,239人に達している
2020-07-28 更新: モデルナ社, NIHおよびBARDAと共同で3万人を目標とする第3相試験 (NCT04470427)開始をアナウンス: Moderna Announces Phase 3 COVE Study of mRNA Vaccine Against COVID-19 (mRNA-1273) Begins. Modena Press Release July 27, 2020 at 6:52 AM EDT
2020-07-21更新 オックスフォード大学/アストラゼネカとカンシノ・バイオロジクスの進捗紹介記事へのリンクを追加: 新型コロナウイルス・ワクチン:オックスフォード大/アストラゼネカと中国カンシノ、第3相試験へ

[2020-07-15更新 第1相試験からの中間報告をNEJM 2020-07-14にて発表]

[出典] An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 — Preliminary Report. Jackson LA et al. for the mRNA-1273 Study Group. NEJM 2020-07-14
  • Moderna社の2020-05-19のプレスリリースの更新にあたる。プレスリリースは15名3グループの参加者の一部のデータをもとにした発表であった。
  • 今回2回目の注射後に参加者45名全員に、SRAS-CoV-2に対する中和抗体がみられた。中和抗体価は、回復者由来の中和抗体の上位に相当したが、43-57日の間徐々に低下した。
  • CD8 T細胞応答の誘導も、低レベルであるが、確認された (一部参加者については未判定)。
  • 参加者の半数以上に疲労、寒気、頭痛、筋肉痛および注射部位の痛みが見られた。全身性副作用は2回目の注射後に拡がりが見られ、特に高用量 (250-μg)では15名中3名に重篤な有害事象が見られた (第2相試験は50μgと100μgで進められている)。
[注] 

[2020-06-20更新 モデルナ社、第3相試験7月開始予定と発表] 
2020-06-21更新 Harvard Medical Schoolを主とする研究グループがDNAワクチンをアカゲザルで評価したScience論文紹介crisp_bio記事へのリンクを、[参考 2]の項に追加。

[出典] Press Release "Moderna Advances Late-Stage Development of its Vaccine (mRNA-1273) Against COVID-19Moderna 2020-06-11 7:57 AM EDT [crisp_bio: 記事タイトルを" 新型コロナウイルスに対するModernaのmRNAワクチン第1相試験進む"を"新型コロナウイルスに対するModernaのmRNAワクチン第3相試験へ向かう"へ変更]
  1. 第1相試験継続中、12コホートのうち9コホートで完了し、NIHは第1相試験の結果を査読付きジャーナルに投稿予定
  2. 第2相試験は、安全性、反応原性、免疫原性の評価を目的として、健常な18-54歳300名と55歳以上50名のコホートで進行中; 50 μgまたは100 μg を28日をおいて2回投与し、その後、12ヶ月間観察
  3. 第3相試験 (7月開始予定)
  • ランダム化, 1:1プラセボ対照試験, 30,000人規模
  • 用量として、第1相試験にて免疫応答を最大化し副作用を最小限に留めた100 μgを選択
  • プライマリーエンドポイント 軽症COVID-19予防; セカンダリーエンドポイント 重症COVID-19予防とSARS-CoV-2感染予防
  • 第3相試験のための必要量は整っており、第3相試験と並行して5億回分製造予定; 2021年には年に10億回分製造へと拡大予定
[参考 1] New York Timesの"Coronavirus Vaccine Tracker" (2020-06-19更新版)によると、140種類を超えるワクチン開発が進行中であり、前臨床, 第1相, 第2相, 第3相の各試験進行中がそれぞ、10件, 8件, 2件とされている。第3相進行中として取り上げられているのは、AstrazZenca/U OxfordのChAdOx1 (NCT04400838と、Murdoch Children's Research Institute (オーストラリア)のBacillus Calmette−Guerin (BCG)ワクチン (NCT04327206)である。
[参考 2] マスコミ報道によると, 大阪府の吉村知事は6月17日の記者会見で、「オール大阪で取り組んできたDNAワクチンについて、動物実験で安全性を確認したことから、6月末には大阪市大の医学部付属病院の医療従事者に投与し (第1相試験に相当)、ヒトでの安全性を確認し、10月には数百人規模へと拡大する (第2相試験に相当)」と発表した。また、一般のワクチンとして投与するのは、国の認可を得てから2021年の春から秋を目指すとした。また、6月20日の日本テレビの番組"ウエークアップ!ぷらす"に出演した吉村知事は、効能については、有症患者の数が少ないことから「数値*で判断」とした 。
 臨床試験情報登録サイトによると、第1/2相試験の規模は30名で2020/06/25~2021/07/31の期間で、単施設,非無作為化, 非盲検, 非対照試験 (出典 JAPIC Clinical Trial Information WebサイトJapicCTI-205328に ) [crisp_bio] [*] 抗体の抗ウイルス活性と量のことか?; 大阪府が大阪市立大学の職員を対象として安全性試験を始めるのは、実質的に「DNAワクチンは安全という前提で強制的に投与」という感を否めない。
 DNAワクチン (DNA vaccination)の新型コロナウイルスに抗する効用については、Harvard Medical Schoolを主とする研究グループのアカゲザルでの検証結果が公開されている: 2020-06-21 新型コロナウイルス: 
米国HMS, DNAワクチンをアカゲザルモデルで評価

2020-05-20更新 STAT, 批判記事発表 [出典] "Vaccine experts say Moderna didn’t produce data critical to assessing Covid-19 vaccine" Branswell H. STAT News 2020-05-19.
 Modernaと協働しているNIAID/NIHがModernaのプレスリリースにコメントせず; 中和抗体が検出された8名の背景が不明 (18-55歳の中での年齢分布を始めとして)であり、その他の参加者の状況も不明; ワクチン2回接種後2週間での判定 (中和能の維持期間不明); 抗体価が回復者由来抗体を"generally"上回るとしたが、もともと分散が大きい比較対象のデータが非開示であり"generally"の含意も不明; これまでのワクチン開発においても論文発表などでのデータ開示が限定的であり、mRNA-1273の定量的データは未だ全く開示されていない。

[2020-05-19更新 第1相試験の途中経過を公表]

[出典] Moderna Announces Positive Interim Phase 1 Data for its mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus. Moderna Press Release. May 18, 2020 at 7:30 AM EDT.
 健常者 (18-55歳)15名のコホート3組に、25 μg,100 μgおよび250 μgを投与し、前二者については2回目の投与後、250 μgについては1回投与後のデータ; いずれも第1回投与後15日で抗体陽転; 25 μg/100 μgについては、それぞれ4名について第2回投与後2週間 (第1回投与から43日)でのデータがあり、回復したCOVID-19患者由来血清に見られるより高レベルの中和抗体産生が見られ、副作用は100 μg投与1名に注射部位に一時的に紅斑が見られたに留まっている。NIAIDなどと共同で行った前臨床試験 (SARS-CoV-2感染マウスモデル実験)では、mRNA-1273が肺でのウイルス複製を阻止することを見た。
[参考] 
  1. "A 12- to 18-month timeline assumes that a vaccine progresses through all the various stages of testing without encountering significant issues" [出典] The Timelines and Implications for COVID-19 Vaccine" Boston Consulting Group. 2020-05-14
  2. 新型コロナワクチン 米中で相次ぎ治験入り. 化学工業日報 2020-04-22
  3. 進行中のCOVID-19ワクチン第2相試験4件 (2020-05-19に米国NLMのClinicalTrials.govを検索した結果)Phase 2
Press Release "Moderna Announces First Participant Dosed in NIH-led Phase 1 Study of mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus" Moderna 2020-03-16; NEWS RELEASE "NIH clinical trial of investigational vaccine for COVID-19 begins" NIH 2020-03-16.
  • KPWHRIのLisa A. Jackson, M.Dが指揮する第1相試験は安全性・反応性と免疫原性を評価するための試験であり、今回は、open label study (非盲検試験)として行われる。
  • mRNA-1273の用量として、15名3組のコホートにそれぞれ、25μg, 100μgまたは250 μgの投与を予定している。
  • 参加者には、28日の間隔をおいて2回、上腕へ筋肉内注射を介して投与され、第2回投与後、12ヶ月間追跡される。
  • まず、15名2組のコホートそれぞれにおいて、4名ずつ25μgまたは100μgを投与し、その結果を受けて、2回目の投与と、残る7名への投与を判断する。さらに、この2組のコホートでの結果を受けて、3組目のコホートへの250 μg 投与を判断する。
[2020-03-16に至るまでの経緯]

 NIAID/NIHがModernaのmRNA-1273の臨床試験を実施する機関として選択したKaiser Permanente Washington Health Research Institute (KPWHRI)は、3月4日に「ModernaのmRNA-1273の安全性を見る第1相試験 [a] の参加者45名の募集を開始した」と発表した [b]。米国シアトルエリアの18-55歳の健常者が対象である。第1相試験で安全性を確認できれば、1,000人規模の第2相試験を開始する予定である。なお、KPWHRIは、NIHが指定したVaccine and Treatment Evaluation Units (VTEU)9機関の一つである。
[a] NCT04283461 Safety and Immunogenicity Study of 2019-nCoV Vaccine (mRNA-1273) to Prevent SARS-CoV-2 Infection.
[b] NEWS 2020-03-04: Kaiser Permanente Washington enrolling participants in first coronavirus vaccine trial. Kaiser Permanente Washington Health Research Institute (KPWHRI) 2020-03-04

 NIAID (アメリカ国立アレルギー・感染症研究所)は、クライオ電顕法によるSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質 (S)構造解析論文 [1]発表時のブログ [2]で「Sの構造情報とアノテーションは、さまざまなタイプのワクチン開発に有用, .... Moderna社がmRNAワクチンを開発中」と述べていた。
  • 2月24日になってModerna社は「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン "mRNA-1273"を第1相試験のためにNIAIDへ出荷した」と発表した [3]
  • mRNA-1273はScience論文に発表された「ウイルスの中の一部であるスパイク糖タンパク質のヒト細胞に融合前の構造」をエンコードするmRNAであり、ヒト細胞において無害なS糖タンパク質として発現し、抗原としてヒト免疫応答を活性化することが期待される。
  • mRNA-1273は、標的配列の同定から42日でmRNA-1273に至った。臨床試験が順調に進めば、今後のS糖タンパク質の変異への迅速対応をも期待させる。
  • mRNA-1273は、ワクチン開発支援を目的として2017年のダボス会議で設立されたCoalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI) からの資金を受けたModernaとNIAIDのVaccine Research Center (VRC) のmRNAワクチン研究開発の蓄積と共同研究によって実現した。
[引用記事とブログおよびmRNA参考記事]
  1. crisp_bio 2020-02-16 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)のクライオ電顕構造; Cryo-EM Structure of the 2019-nCoV Spike in the Prefusion Conformation. Wrapp D, Wang N [..] McLellan JS. bioRxiv 2020-02-15 > Science 2020-02-19
  2. "NIH Scientists Identify Atomic Structure of Novel Coronavirus Protein" NIAID Now 2020-02-19.
  3. Moderna Press Release "Moderna Ships mRNA Vaccine Against Novel Coronavirus (mRNA-1273) for Phase 1 Study" 2020-02-24 6:04 EST
  4. "Unlocking the potential of vaccines built on messenger RNA" Dolgin E. Nature 2019-10-16.
  5. "mRNA 医薬開発の世界的動向" 位髙啓史, 秋永士朗, 井上貴雄. 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス   Vol. 50 No. 5 (2019)リンクを解除
[本記事2020-03-17までの更新履歴]
  1. 2020-02-26 初稿
  2. 2020-03-11 追記
  3. 2020-03-17 タイトルを「開始へ」から「開始」に改訂し、Moderna社のPress ReleaseとNIHのNEWS RELEASEとを引用 [*]