# 2020-05-01 Nature論文に掲載されていた高精度版構造7BQYを追記
# 2020-04-09
 本稿の旧タイトル「新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対してIC50 0.48μMの阻害活性を示す低分子を治験薬から発見」を、2020-04-09に迅速出版されたNature論文のタイトルに準拠して改訂; bioRxivのv.1から各種数値も若干改訂された。
(これより以前の更新履歴は文末に移動)
[出典] "Structure of Mpro from COVID-19 virus and discovery of its inhibitorsJin Z, Du X, Xu Y, Deng Y, Liu M [..] Jiang H, Rao Z, Yang H. Nature 2020-04-09; [構造情報] 6LU7 The crystal structure of COVID-19 main protease in complex with an inhibitor N3 (左下図参照); 7BQY.(1.7 Å分解能; リガンド結合部分にズームインした右下図参照)

 2020-04-09 2020-05-01 17.56.29
 < "Structure-based drug design, virtual screening and high-throughput screening rapidly identify antiviral leads targeting COVID-19"  bioRxiv v.1 2020-02-27 / v2 2020-03-10 / v.3 2020-03-29.

 SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ (以下, Mpro; 3CL加水分解酵素)は、ウイルスの複製と転写の要となる酵素であり、創薬の標的である。上海科技大と中国科学院上海薬物研究所などの中国研究機関に米・豪の大学に所属の研究者が加わった研究グループは今回、阻害剤結合複合体構造解析、バーチャルスクリーニング、ハイスループットスクリーニング、および、細胞アッセイによって、Mproを阻害する新奇なリード化合物を同定した。

 阻害剤候補N3の
Mproへのドッキング解析
  • 研究グループは先行研究で、SARS-CoVとMERS-CoVを含む多種類のコロナウイルスを特異的に阻害する分子N3を、コンピュータ支援創薬 (Computer-Aided Drug Design, CADD)の手法により分子機序に基づいて設計・作出していた。
  • 今回、N3と、SARS-CoV-2のMproのホモロジーモデルとのドッキングシミュレーションからN3がSARS-CoV-2 Mproの基質結合ポケットに入り込めることを確認し、化学速度論解析から、N3がSARS-CoV-2 Mproを時間依存で非可逆的に阻害することを見出した。
  • 続いて、SARS-CoV-2 MproとN3の複合体構造を分解能2.1-Åで決定した
MproとSARS-CoV-2に対する阻害剤スクリーニング
  • 承認薬、治験薬、および、薬理活性を帯びた化合物を含む10,000種類異常の化合物を対象として、インハウスのデータベースの化合物群を対象とするドッキングシミュレーションから、cinanserinがIC50値125μMにて、Mproのポケットに入り込むことを見出した。
  • 続いて、承認薬、治験薬および薬理活性化合物からなる~10,000化合物を対象として、Mpro阻害ハイスループットスクリーニングを行った。
  • その結果、ヒット化合物としてIC50が0.48~16.62 0.67 ~ 21.4μMの薬剤7種類 (FDA承認薬のdisulfiramとcarmofur; 治験薬の ebselen, TDZD-8, shikonin, tideglusib, ならびにPX-12)を同定した。
  • 7種類の中では、セレンを帯び抗炎症・抗酸化・細胞保護活性が知られており細胞毒性も極めて低いebselenが、最も強力な阻害剤 (IC50 0.67μM)であった。
  • ドッキングシミュレーションでは、7種類いずれもMproのポケットに結合可能であったが、TDZD-8は凝集阻害剤でMproに特異的な阻害剤とはならなかった。
  • Vero細胞におけるアッセイでは、ebselen、アルツハイマー病を標的として開発された化合物thiadiazolidinone-8 (TDZD-8)、とNN3が、10 μM濃度で強力な抗ウイルス活性を発揮し、阻害活性としてそれぞれEC50値4.67μMと16.77μMを示した。加えて、qRT-PCRにより、それぞれが、SARS-CoV-2の量を、20.3分の1、10.9分の1、および8分の1にまで低減することを見出した。なお、cinanserinが、Mpro単独に対するよりも強力な抗SARS-CoV-2活性 (IC50 20.61 μM)を示すことも見出した。
[COVID-19治療関連リンク]
  • crisp_bio 2020-03-07 新型コロナウイルスの感染は、ヒト細胞のACE2とTMPRSS2に依存し、慢性膵炎治療薬で阻害される:"SARS-CoV-2 Cell Entry Depends on ACE2 and TMPRSS2 and Is Blocked by a Clinically Proven Protease Inhibitor" Hoffmann M [..] Pöhlmann S. Cell 2020-03-05
  • ワクチン (ウイルスベクター, RNA, DNA, タンパク質)と治療法 (抗体、細胞、siRNA)の開発動向:"COVID-19: A growing list of new vaccines and therapies in development" Pong W. Biocentury 2020-02-26.
  • 血栓形成を阻害するジピリダモール (ペルサンチン) in vitroでEC50 100 nMの活性でSARS-CoV-2複製を阻害、12名の血液凝固異常を伴うCOVID-19患者の補助療法に効果あり: 処方2週間で、重篤6名のうち3名と、中程度4名全員退院へ [出典] "Therapeutic effects of dipyridamole on COVID-19 patients with coagulation dysfunction" Liu X, Li Z, Liu S, Chen Z, Sun J [..] Zhao J, Jong X, Zhang Y, Zhou F, Luo HB. medRxiv 2020-02-29
  • 抗ウイルス薬などの既存薬剤のドラッグリパーパシング (ドラッグリポジショニング/ドラッグリプロファイリング)の試みNEWS "Coronavirus puts drug repurposing on the fast track - Existing antivirals and knowledge gained from the SARS and MERS outbreaks gain traction as the fastest route to fight the current coronavirus epidemic" Harrison C. Nat Biotechnol 2020-02-27 ; COMMENT "Therapeutic options for the 2019 novel coronavirus (2019-nCoV)" Li G, De Clercq E. Nat Rev Drug Discov 2020-02-19.
    [更新履歴]
    2020-03-07「新型コロナウイルスの感染は、ヒト細胞のACE2とTMPRSS2に依存し、慢性膵炎治療薬で阻害される」へのリンク追加 (crisp_bio 2020-03-07)
    2020-03-06 Biocenturyによるワクチンと治療法のリストへのリンクを[COVID-19治療関連リンク]の項に追加;SARS-CoV-2のSがTMPRSS2でプライムされ、抗体医薬とプロテアーゼ阻害剤の一種である承認薬の可能性を示唆したCell 2020-03-05論文の書誌事項を[COVID-19治療関連リンク]の項に追加
    2020-03-05 既存薬剤のSARS-CoV-2への適用模索の記事を[COVID-19治療関連投稿]に追加

    [crisp_bio注]
     COVID-19/SRAS-CoV-2 関連crisp_bio記事はタグ#COVID-19から