[出典] "A CRISPR-Cas9-based reporter system for single-cell detection of extracellular vesicle-mediated functional transfer of RNA" De Jong OG [..] Vader P. Nat Commun 2020-02-28

背景
  • エクソソームと微小小胞体 (Microvesicles: MV)に大別されるEVsは、可溶性タンパク質、膜タンパク質、脂質、ならびにRNA分子を輸送し、細胞間コミュニケーションを担っている。
  • 近年、EVによるRNAの輸送が多様な生理的過程および病理過程に関与し、また、EVに輸送されるRNA分子は、完全長のmRNAよりもむしろ~100 ntと小型のncRNA分子 (sncRNA)であることが、明らかになってきた。
  • 並行して、EVによるRNA輸送をドラッグ・デリバリーや再生医療の手段として利用する研究も進んできた。
  • 一方で、EVの動態の可視化は進んできたが、sncRNAの動態の可視化は進んでおらず、EVによるsncRNA輸送の分子機構の解明が遅れていた。
システム構築と検証実験
  • U Medical Center Utrecht, Netherlands Cancer Institute, U Oxford, ならびにKarolinska Inst.の研究グループは今回、sgRNAをモデルとして、“Stoplight”レポータシステムを開発し、CROSS-FIRE (CRISPR Operated Stoplight System for Functional Intercellular RNA Exchange)として発表した [Fig. 1の一部引用下図 a, -c, -d 参照]。2020-03-06 12.53.01
  • CROSS-FIREは、上図 a のStoplightコンストラクトとspCas9を導入した細胞をレポーター細胞として、上図 d にあるように、レポーター細胞がEVを介して、Stoplightコンストラクトのリンカー領域を標的とするsgRNA (以下、T-sgRNA)を帯びたドナー細胞からT-sgRNAを取り込めると、常時発現しているmCherryに加えて、eGFPを発現する
  • はじめに、HEK293T細胞をレポータ細胞として、T-sgRNAプラスミドのデリバリにより選択的にeGFPを発現することを確認した [Fig. 1一部引用の下図 b 参照]。2020-03-06 12.53.12
  • 次に、レポータ細胞 (HEK293T, HMEC-1, またはhTERT-MSC)とドナー細胞 (HeLa, HMEC-1, MCF-7, MDA-MB-231,  またはT47D)の共培養実験などにより、組み合わせによって効率が異なるが、sgRNAsが、細胞融合や細胞接触を介さず、EVを介してドナー細胞からレポータ細胞へ輸送されることを、確認した [Fig. 1一部引用の下図 e 参照]。
CROSS-FIREによる関連遺伝子の機能解析
  • MDA-MB-231ドナー細胞における一連の遺伝子のsiRNAノックダウン、および、HEK293Tレポータ細胞における一連の遺伝子のsiRNAノックダウンが、それぞれsgRNAの細胞間伝達に及ぼす影響をCROSS-FIREにより単一細胞分解能で判定した。
  • その結果、EVのサブタイプの生合成、および、エンドサイトーシスと細胞内膜輸送に関与する一連の遺伝子を明確にするに至った。
[参考] エクソソーム関連crisp_bio記事: crisp_bioコレクション: エクソソーム