#2020-03-30 Aarhus U (デンマーク)、カモスタットメシル酸塩の第1/2相試験開始へ: ClinicalTrial.gov ID NCT04321096 "The Impact of Camostat Mesilate on COVID-19 Infection (CamoCO-19)"
(これ以前の更新履歴は文末へ)

[出典] "SARS-CoV-2 Cell Entry Depends on ACE2 and TMPRSS2 and Is Blocked by a Clinically Proven Protease Inhibitor" Hoffmann M [..] Pöhlmann S. Cell 2020-03-05. ; NEWS RELEASE "Preventing spread of SARS coronavirus-2 in humans - Göttingen infection researchers identify potential drug" EurekAlert! 2020-03-05.
  • German Primate Center, Charité-Universitätsmedizin Berlinなどドイツ研究機関のグループが、SARS-CoV-2が、SARS-CoVと同様に、そのスパイク糖タンパク質(以下、スパイクまたはS)を介してヒト細胞膜上のアンジオテンシン変換酵素2 (ACE2)に結合し、そのスパイクがヒト細胞のセリンプロテアーゼTMPRSS2 [*] によって活性化されることで、ヒト細胞 (293T細胞)に侵入することをin vitroで確認した (その機構について、NEWS RELEASEから引用した下図模式図を参照)。ACE & TMPRSS2
  • また、慢性膵炎や逆行性食道炎の治療薬として日本で承認されている経口プロテアーゼ阻害剤カモスタットメシル酸塩 (camostat mesilate) が、TMPRSS2を阻害し、ひいては、SARS-CoV-2の肺細胞株への侵入を阻害することを見出した。
  • 回復期のSARS患者は、SARS-CoVのスパイクに対する中和抗体を帯びている。SARS回復期の患者3名に由来する血清が、in vitroで、SARS-CoVの細胞侵入を阻害し、また、SARS-CoV-2の細胞侵入も、効率は低いが、阻害することを見出した。SARS-CoVのスパイクのサブユニットS1で免疫したウサギの血清も、SARS-CoVとSARS-CoV-2の細胞侵入を阻害した。
[crisp_bio補足] 

 コロナウイルス 
  • コロナウイルスは、脂質と糖タンパク質で構成される膜 (エンベロープ)をまとっているエンベロープウイルスの一種であり、本記事冒頭の模式図にもあるようにエンベロープからスパイクと呼ばれる糖タンパク質が突き出していている外観が王冠 (コロナ)のように見えることから、コロナウイルスと命名された。
  • コロナウイルスはコウモリをはじめとして多くの野生動物に見られるが、ひろくヒトに感染してきたコロナウイルスとしては4種類のタイプが知らていた: 229E (alpha coronavirus); NL63 (alpha coronavirus); OC43 (beta coronavirus); HKU1 (beta coronavirus)。
  • 近年これらに加えて、動物からヒトに感染するようになったコロナウイルスとして、中東呼吸器症候群をもたらすMERS-CoVと重症急性呼吸器症候群を引き起こすSARS-CoVが知られていたところ、2019年から、COVID-19と命名されることになった症候群を引き起こすSARS-CoV-2が顕在化した。
  • エンベロープウイルスは一般に、エンベロープとヒト細胞の膜との融合により細胞内に侵入するが、コロナウイルスの中でSARS-CoVは、スパイクでヒト細胞膜上の受容体に結合し、その後に、ヒト細胞に内在するプロテアーゼによって不活性型のスパイク (S)が、そのサブユニットのS1とS2へと切断されることで細胞融合活性を発揮するようになり、ヒト細胞に侵入する。SARS-CoV-2もSARS-CoVと同じ機構でヒト細胞に侵入するという報告が、2020年1~2月の間に相次いだ。
  • [この項の参考資料と文献] 米国CDC Webサイト Coronavirus; 特集1 ウイルス侵入と受容体 4. コロナウイルスの細胞侵入機構. 田口文広, 松山州徳. ウイルス 第59巻第2号, pp215-222 (2009)
 ACE2受容体
 [参考文献, 関連crisp_bio記事など]
  • [*] "プロテアーゼ依存性ウイルス病原性発現機構とTMPRSS2" 竹田 誠. ウイルス 2019-07-19;69(1):61-72
  • crisp_bio 2020-03-17 新型コロナウイルスを、TMPRSS2を発現する細胞株を利用して、効率的に分離・増殖
  • crisp_bio 2020-03-11 SARS−CoV−2ワクチン (mRNA-1273)第1相試験の参加者募集開始 (米国)
    crisp_bio 2020-03-11
      SARS-CoVのスパイク(S)のサブユニットS2に対するモノクローナル抗体が、SARS-CoV-2と交差反応した
  • crisp_bio 2020-03-10 新型コロナウイルスの創薬標的候補であるヌクレオカプシドのウイルスゲノムRNA結合ドメインの結晶構造解析
  • crisp_bio 2020-02-22 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)の構造、機能および抗原性 ... SARS-CoV-2 S-MLVで免疫したマウスの血清が、 SARS-CoV S-MLVのVeroE6細胞への感染を完全に阻害し、SARS-CoV-2-MLVの感染をコントロールの~10%まで抑制することを見出した ...
  • crisp_bio 2020-03-02 新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対してIC50 0.48μMの阻害活性を示す低分子を治験薬から発見
  • crisp_bio 2020-02-21 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)とヒト細胞受容体ACE2との複合体クライオ電顕構造
  • crisp_bio 2020-02-20 コロナウイルス・プロテアーゼとは - RCSB PDB/PDBjの「今月の分子」から転載
  • crisp_bio 2020-02-16 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)のクライオ電顕構造
  • 2020-03-17 日経バイテクオンライン「東京大がカモスタットの新型コロナウイルスに対する臨床研究を計画 - ドイツ研究者がCell誌に報告した小野薬の慢性膵炎治療薬」橋本宗明. 2020-03-17 8:00
[更新履歴]
# 2020-03-18 東京大、カモスタットメシル酸塩と同じくプロテアーゼ阻害剤で急性膵炎治療薬であるナファモスタット (フサン)の臨床研究に着手 (東大新聞オンライン 2020-03-18)
# 2020-03-17  [参考文献, 関連crisp_bio記事など]への追加: 日経バイテクオンライン「東京大がカモスタットの新型コロナウイルスに対する臨床研究を計画」の記事へのリンクと関連ツイートを文末に追加; 感染研などによるVeroE6/TMPRSS2を利用するウイルス分離・増殖法論文関連crsip_bio記事へのリンクを追加
# 2020-03-11 SARS-CoVのS2に対する抗体と交差に関する投稿と, mRNAワクチン第1相試験の参加者募集開始のニュースへのリンクを [参考文献, 関連crisp_bio記事など]に追加
# 2020-03-08 コロナウイルスのヒト細胞への侵入機構とACE2阻害の効果について補足
# 2020-03-07 初稿