[出典] "Monoclonal antibodies for the S2 subunit of spike of SARS-CoV cross-react with the newly-emerged SARS-CoV-2" Zheng Z [..] Tan YJ. bioRxiv 2020-03-07

 National University of Singapore, A*STAR, Karolinska Instituteなどのシンガポールとスエーデンの研究グループが、 SARS-CoVとSARS-CoV-2の間で受容体結合ドメイン(receptor binding domain: RBD)が保存されており、また、ヒト細胞への侵入に同じ受容体アンジオテンシン変換酵素2 (ACE2)を利用していることから、SARS-CoVのスパイク糖タンパク質 (S)を標的として開発されたモノクローナル抗体のSARS-CoV-2に対する交差反応性を検証した。
  • SARS-CoV Sのうち細胞融合の機能を担っているとされるS2サブユニットにおける免疫原性ドメインが、SARS-CoV-2の株の間での保存性が高いことを見出した。
  • この免疫原性フラグメントに対するマウス・モノクローナル抗体 (mAb)4種類が、マウス細胞株で発現させたSARS-CoV-2のSを認識することを確認した。
  • そのうちの1種類 (mAb 1A9)が、SARS-CoV-2感染細胞において、Sを検出することを確認した。
 このように、SARS-CoV-2と交差反応するmAbsは、SARS-CoV-2の研究と診断ツールの開発に有用である。

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