2020-05-21 更新: ブログタイトルを"Mammoth Biosciences, DETECTRに基づく簡易キット開発へ"に改訂 (旧タイトル "RNAその場迅速検査を実現する廉価ツール - DETECTRは来た、SHERLOCKは? -")
 Mammoth BiosciencesはGSK Consumer Healthcareと共同で、SARS-CoV-2を迅速に高精度で検出する簡便かつ使い捨て可能なキット開発へ, 年内のFDA EUA申請を目指す [出典: Mammoth Biosciencesのツイート (下図参照)とMIT Technology Review 2020-05-20ニュース] 
2020-04-17 更新Mammoth BiosciencesなどのDETECTRに基づくSARS-CoV-2高感度検出器のmedRxiv投稿が, Nature Biotechonolgy論文"CRISPR–Cas12-based detection of SARS-CoV-2"として登場 (2020-04-16); ブログタイトル変更 (旧タイトル: 「新型コロナウイルス:DETECTRは来た、SHERLOCKはどうしてる?」)

DETECTR - SARS-CoV-2感染患者の検体で、性能を実証
[出典] "CRISPR–Cas12-based detection of SARS-CoV-2Broughton JP, Deng X [..] Chen JS, Chiu CY.Nat Biotechnol 2020-04-16"Rapid Detection of 2019 Novel Coronavirus SARS-CoV-2 Using a CRISPR-based DETECTR Lateral Flow Assay"  medRxiv 2020-03-10.
[crisp_bio注] 以下のテキストはmedRxiv版に準拠
 Mammoth BiosciencesはUCSFならびにCalifornia Department of Public Healthと共同で投稿したmedRxivにて、「米国のCOVID-19患者から分離した臨床サンプルで検証した結果、SARS-CoV-2に最適化したDETECTRが、米国CDCのリアルタイムRT-PCRアッセイに匹敵する性能を示した」と発表した。
[crisp_bio 注] Nature Biotechnologyでは米国内の36名のCOVID-19患者と、42名のSARS-CoV-2以外のウイルス性呼吸器感染症の患者由来の検体を対象とする比較解析を行ったとしている

背景
  • この40年の間に、動物からヒトへの伝播 (zoonotic animal-to-human transmission)から始まったとされている新興ウイルスによる大規模なパンデミックが繰り返し発生した。HIV, SARS, MERS, 2009年のH1N1インフルエンザウイルス, エボラウイルス, ジカウイルス, そしてSARS-CoV-2である。
  • これまで、精密・迅速・簡易な分子診断ツールが無かったために、新興ウイルス感染症が始まる度に、公衆衛生対応が遅れをとって、パンデミックに至っていた。
  • COVID-19感染症を引き起こすSARS-CoV-2の場合、2019年12月に武漢で報告されて以来2020年3月4日までに90,000例が報告され、3,000名が亡くなられた[*] 。また、SARS-CoV-2は無症状または軽症な感染者からのヒト・ヒト感染が報告されており、一層、高速・高信頼・簡便な検査ツールが求められている。
  • [*] crisp_bio注: WHO, 2020-03-12 (JST)にパンデミックを宣言: [NEWS] Coronavirus latest: WHO describes outbreak as pandemic. Nature 2020-03-11.
  • 米国CDCが開発しFDAのEmergency Use Authorization (EUA)を得た装置も含めて、4-6時間で判定可能な定量的RT-PCR (qRT-PCR)装置が開発されてきた。しかし、SARS-CoV-2感染疑いの患者の診断には、認証された検査機関に検体を輸送する時間を入れたターンアラウンドタイムは24時間を超えたことから、米国では当面、各臨床検査研究室で開発した手法による判定を認めた。
成果
  • Mammoth BiosciencesのJames P. Broughtonらは今回、Cas12のコラテラルssDNA切断活性に栄研化学が開発したLAMP法 (RT-LAMP) とラテラルフローアッセイを組み合わせたDETECTRをSARS-CoV-2検出へと適応させたSARS-CoV-2 DETECTRによって、患者の検体から抽出したRNAから出発して、~30分で判定可能なことを実証した。
  • SARS-CoV-2 DETECTRは、SARS-CoV-2が帯びているエンベロープ(E)と核タンパク質 (nucleoprotein: N)の遺伝子を標的とするプライマーを使用し、WHOのアッセイ対象 (E)とCDCのアッセイ対象の一部 (NのN2領域)と重なる領域をLAMPで増幅する。CDCアッセイ対象となっていたN1とN3は、Cas12-gRNAが認識するPAM配列が存在しなかったため対象外とした。
  • 検証実験は、SARS-CoV-2  (NC_045512)、SARS-CoV (NC_004718)、コウモリSL-CoVZC45 (MG772933)の3種類のコロナウイルスのE遺伝子を標的とするgRNAsと、 SARS-CoV-2のN遺伝子を標的とするgRNAsを設計・作出し、ヒトRNase P遺伝子をコントロールとして、行った。
  • SARS-CoV-2 DETECTRは、62°CでのRT-LAMPの反応に20分、37°CでのCas12による検出反応に10分を経て、ラテラルフローアッセイの紙片で目視判定可能となり、判定結果は、N1とN2を標的とするCDCアッセイの結果と一致した (著者注:N3は今回試薬に問題があったことから、CDCアッセイにおいても標的から外された) 。N2を標的とすることで、SARS-CoV およびSL-CoVZC45との峻別が可能であった。
  • 検出限界について、SARS-CoV-2 DETECTRと、EUA承認CDCアッセイとを比較し、それぞれ、10 copies/μLと1 copy/μLを得た。無症状のドナーから鼻咽頭スワブを経て臨床検体輸送用の培地 (universal transport medium: UTM)に収められた検体から直接RT-LAMPで増幅したテストでは、検出限界は500 copies/μLまで低下した。
  • PCRで陽性と判定された感染者6名からの11検体 (鼻咽頭スワブと中咽頭スワブ由来)、インフルエンザウイルス感染患者4名からの12検体 (鼻咽頭スワブ由来)、季節性コロナウイルス (OC43, HKU1, NL63)感染患者3名からの検体、および、5名の健常者からの検体について、CDC qRT-PCRと SARS-CoV-2 DETECTRの精度を比較し、感度90%、特異度100%を得た。
  • SARS-CoV-2 DETECTRのUS FDAのガイダンスに応じた臨床評価が、(Clinical Laboratory Improvement Amendments)認証微生物研究室で進行中である。
  • DETECTRは、新興ウイルスに対して配列データをもとに即応可能であり、また、マイクロフルイディクス技術に基づいてカートリッジ化も可能である。さらに、凍結乾燥した試薬を利用することで、臨床検査研究室の外、その場での診断 (POC)も可能になる (ただし、咽頭部のスワブからのRNA抽出が可能な場所であれば)。
Sherlock Biosciences、Cepheid社と共同でSARS-C0V-2検出の実証実験へ
[出典] "Cepheid and Sherlock Biosciences Establish Collaboration on New GeneXpert Tests for Infectious Diseases and Oncology Leveraging CRISPR Technology" Sherlock Biosciences 2020-02-28.
  • 2社は、感染症と癌の検診を目的として、Sherlock BiosciencesのSHERLOCKを、CepheidのPCR増幅から標的核酸の検出までを全自動で解析可能とした装置GeneXpert®システム [$]上で走らせることを目指す。その概念実証実験の対象として、今回、SARS-CoV-2の検出を取り上げた。
  •  [$] GeneXpert®利用例: "GeneXpertを用いたClostridioides difficile毒素検出能の評価" 仲田佑未, 田仲祐子, 室田 博美, 森下奨太, 寺岡千織, 野上智, 福田哲也, 千酌浩樹. 医学検査 2019 年 68 巻 4 号 p. 707-711
  • Broad InstituteとMcGovern Instituteはすでに新型コロナウイルス検出用SHERLOCKのプロトコルを公開したが、Sherlock社の共同設立者でありCEOのRahul Dhandaは「臨床検査室に加えてより広い環境での効率的判定を可能にすることを模索しつつ、まず、SHERLOCKのコロナウイルス検出への適合性を見ていく」と述べている。
[参考] 迅速かつポータブルな検出するツール (CRISPRdx以外の手法も含む)
[参考] 関連crisp_bio記事
2020-02-15 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)- 下図参照DETECTR & SHERLOCK
2020-02-19 DETECTR、新型コロナウイルス検出プロトコルversion 2を公開
2020-02-19 SHERLOCK、新型コロナウイルス検出プロトコルを公開

[参考] Mammoth Biosciencesのツイートを以下に引用