[出典] "Genetic interaction mapping and exon-resolution functional genomics with a hybrid Cas9–Cas12a platform" Gonatopoulos-Pournatzis T, Aregger M, Brown KR [..] Myers CL , Blencowe BJ, Moffat  J. Nat Biotechnol 2020-03-16

 University of TorontoとUniversity of Minnesotaの研究グループは今回、遺伝型と表現型の相関を見ていく機能ゲノミクスにおいて、個々のパラログとエクソンの機能同定を可能とするプラットフォームCHyMErA (Cas Hybrid for Multiplexed Editing and screening Applications)を開発した。

CHyMErAの構成
  • CHyMErAは、Streptococcus pyogenes (Sp)-Cas9とLachnospiraceae bacterium (Lb)-Cas12aまたはAcidaminococcus sp. BV3L6 (As)-Cas12aの共発現と、単一プロモーターで発現させるCas9 gRNAsとCas12のgRNAsを融合した ‘ハイブリッド・ガイド’RNAs (hgRNAs)とで、構成されている。
  • 具体的には、"U6 promoter : Cas9 guide : tracrRNA : direct repeat : Cas12a guide"のhgRNAのコンストラクトから、Cas12aのリボヌクレアーゼング活性 (RNase)を介して、Cas9とCas12aとの組み合わせでそれぞれ機能するgRNAsを生成する設計である。
  • このCHyMErAによって、特定の表現型に対する進化過程でのさまざま規模のゲノム重複に由来するパラログ間の冗長性と独自性、および、選択的スプライシングの結果生成されるエクソン (以下、選択的エクソン)の中で特定の表現型の鍵を握るエクソン同定を実現した。
CHyMErAの実証
  • Cas9-Cas12a hgRNAsの組み合わせは、マウスES細胞においてPtbp1の選択的エクソン (第8エクソン)の欠失を10-43%の効率で実現し、マウス細胞とヒト細胞の選択的エクソンについても、同様の結果を得た。
  • HPRT1遺伝子またはTK1遺伝子のノックアウトは、それぞれ、6-チオグアニン (6-TG)またはチミジン阻害に対する耐性をもたらすことが知られていたところ、Cas12aとCas9でそれぞれHPRT1TK1を標的にするCHyMErAが、細胞に双方に対する耐性をもたらすことを確認した。また、ここで、Cas12に組み合わせるgRNAの多重化が可能なことも確認した。
  • ほぼ一倍体ヒトHAP1細胞において、HPRT1TK1を含む~1,000種類の遺伝子を対象として、エクソンとエクソン間を標的とするhgRNAにより、エクソンの欠失またはエクソンへの変異を誘導することで、エクソンの機能を同定可能とするプール型スクリーンも実証した。ここで、Lb-Cas12aがAs-Cas12aよりも高活性であることが示された。
  • なお、hgRNAの設計にあたり、Cas12a gRNAsの設計法が確立されていなかったことから、必須遺伝子を標的とする実験からのデータに基づいて、DeepCpf1[*]に優る深層学習 (畳み込みニューラルネットワーク/CNNs)モデルを開発し、CHyMErA-Netと命名した。
  • [*] crisp_bioコレクション: CRISPR技術を支援する機械学習参照 
ニ遺伝子間相互作用 (digenic interactions)とエクソンの機能
  • CHyMErAによる遺伝子ペア・ノックアウト実験により、TP53とその抑制因子MDM4およびMDM2の間の遺伝子間相互作用 (genetic interactions: GIs)を探った。野生型TP53を発現するRPE1細胞で、想定通りのGIを同定し、不活性型のTP53変異遺伝子 (TP53-S215G)を帯びたHAP1細胞では、これも想定通り、このGIは存在しないという結果を得た。また、MCL1BCL2L1の負のGI、および、KDM6BBRD4の負のGIも、想定通り、同定した。
  • CHyMErAを介して、細胞周期, タンパク質輸送、スプライシング, タンパク質の代謝回転と修飾, および代謝に関与しパラログ・ペアが存在する1,344遺伝子について、パラログペア間の二遺伝子間相互作用を見た。HAP1細胞とRPE1細胞において、表現型に非相加的作用をもたらすペアをそれぞれ219ペア (33%)と122ペア (18%)同定し、これまでに知られていた負のGIsに加えて、新奇なGIsを発見した。また、正の関係のGIsも同定した。
  • CHyMErAを介した化学遺伝学的スクリーンにおいて、mTOR阻害剤Torin1に対する既知の耐性/感受性遺伝子の同定を確認すると共に、新たな耐性/感受性遺伝子を発見した。
  • また、CHyMErAを介して、細胞のフィットネスに影響を与えるエクソンの同定にも成功した。
Nature Biotechnologyのツイートを以下に引用