1. CRISPR/dCas9によるエピゲノム編集ツールを利用して、Fgf21遺伝子プロモーターのDNA脱メチル化を実現
[出典] "Targeted DNA demethylation of the Fgf21 promoter by CRISPR/dCas9-mediated epigenome editing" Hanzawa N, Hashimoto K [..] Ogawa Y. Sci Rep 2020-03-20
  • 東京医科歯科大学の橋本貢士と小川佳宏らは先行研究で、マウス乳仔期の肝臓において、線維芽細胞増殖因子21 (FGF12)が、肝臓での脂質代謝を制御する核内受容体PPARα (peroxisome proliferator-activated receptor α)依存で脱メチル化を受けること、および、リガンド結合によるPPARαの活性化を介して、DNA脱メチル化ひいてはFGF12の発現が亢進することを報告していた。
  • 研究グループが利用したエピゲノム編集ツールは、CRISPRaの一種であるSunTagシステムに準拠して [*]、dCas9に、22 aaの長さのリンカーを介して、5連のGCN4 -  単鎖可変領域フラグメント (scFv) - 脱メチル化酵素TET1の触媒ドメイン (TET1CD)を結合した人工因子である [Figure 1 引用下図 a 参照]。DNA demethylation 2020-03-28 21.44.07
  • Fgf21のプロモーター領域を標的とするこの人工因子によって、マウス肝癌細胞株Hepa1-6とPPARα欠失マウスにおいて、それぞれ、PPARαの合成リガンド投与と断食をキューとするFgf21のDNAメチル化低減を介して、Fgf21の発現が亢進することを示した。
  •  [*] CRISPR関連文献メモ_2016/09/03 #2 [論文] 脱メチル化によって標的遺伝子を特異的にin vivo 活性化するCRISPR/Cas9ツールボックスを開発
2. Cdk5遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9と抗癌剤を共に、弱酸性pH応答性ナノ粒子でデリバリすることで、腫瘍微小環境を'cold'から'hot'へ改変
[出典] "Reshaping tumor immune microenvironment through acidity-responsive nanoparticles featured with CRISPR/Cas9-mediated PD-L1 attenuation and chemotherapeutics-induced immunogenic cell death" Tu K [..] Zhang Z. ACS Appl Mater Interfaces 2020-03-20
  • 表題のデリバリー法により、CRISPR/Cas9によるCdk5 (サイクリン依存性タンパク質キナーゼ5)のノックアウトを介したPD-L1発現抑制に、パクリタキセルによる免疫応答を引き起こす細胞死 (immunogenic cell death: ICD)の誘導、Tregの抑制、腫瘍随伴マクロファージの再極性化、および抗腫瘍免疫応答の亢進の効果が加わり、腫瘍成長が効果的に抑制され、全生存期間が伸びるに至った。
3. ヌクレオソーム枯渇‘mini’U6 Pol IIIプロモーターを介して多重sgRNAsによるCRISPR/Cas9遺伝子編集を実現
[出典] "'Mini'U6 Pol III promoter exhibits nucleosome redundancy and supports multiplexed coupling of CRISPR/Cas9 effects" Preece R, Georgiadis C, Gkazi SA et al. Gene Ther 2020-03-20
  • RNAポリメラーゼ III (Pol III)は、短鎖ノンコーディングRNAsを発現し、CRISPR sgRNAの発現にも利用され、Pol IIIのH1とU6を組み込んだベクターはゲノム編集療法に利用されている。英国の研究グループは今回、
  • レンチウイルスのLTR領域に表題U6プロモーターを埋め込むことで、高レベルの転写活性を実現した。さらに、‘mini’H1とU6の二重プロモーターを介した二重sgRNAs転写によりTCRとHLA分子の同時破壊を実現し、ユニバーサルCAR T細胞の効率的作出の可能性を示した。
4. [レビュー] 抗-CRISPRタンパク質の分子機構は多彩である: 氷山の一角?
[出典] "Diversity of molecular mechanisms used by anti-CRISPR proteins: the tip of an iceberg? " Hardouin P,  Goulet A. Biochem Soc Trans 2020-03-20
  • CRISPR-Cas獲得免疫機構の各ステップに干渉する分子機構に注目し、オルソステリックな阻害、アロステリックな阻害、CRISPR-Casコンポーネントを非可逆的に改変する酵素活性などの多彩な分子機構をレビュー
5. CRISPR関連研究の最新動向ハイライト - 主として2017-2019年に刊行された論文の簡潔な紹介
[出典] "Recent advances in CRISPR research" Chen B [..] Li W. Protein & Cell 2020-03-21
  • SpCas9変異体作出およびホモログの発見; 塩基エディティング; dCasイメージング; 植物育種への応用; 動物の育種と疾患モデル動物の作出; Ex vivo/in vivo遺伝子編集による療法研究
6. ディスレクシア, 自閉症, アルツハイマー病に関連するDip2aホモ型ノックアウトmESC株IBMSe001-A-1を樹立
[出典] "Generation of Dip2a Homozygous Knockout Murine ES Cell Line IBMSe001-A-1 via CRISPR/Cas9 Technology" Yao M [..] Wu C, Zheng Y. Stem Cell Res 2020-03-19

7.  殺虫活性を帯びた3種類のBt毒素に対する農業害虫シロイチモジヨトウの候補受容体5種類を、CRISPR KOスクリーンで評価
[出典] "Evaluation of five candidate receptors for three Bt toxins in the beet armyworm using CRISPR-mediated gene knockouts" Huang J et al. Insect Biochem Mol 2020-03-19
  • 3種類のBt毒素と5種類の受容体との相互関係明らかに: 毒素Cry1AcとCry1Faに対して受容体のABCC2が主にCad1が従に応答する; ABCC2はCry1aにも応答する。