[出典] "Glia-to-Neuron Conversion by CRISPR-CasRx Alleviates Symptoms of Neurological Disease in Mice" Zhou H,  Su J, Hu X, Zhou C  [..] Yang H. Cell 2020-04-08. 

 中国科学院上海生命科学研究院の神経科学と計算生物学の研究グループは今回、CRISPR-Cas遺伝子編集技術によるグリア細胞の神経細胞への転換を実現し、神経変性疾患と脳損傷に伴う神経細胞の消失を、CRISPR-Cas遺伝子編集技術により修復可能なことを、示した。
  • CIRPSR-Cas遺伝子編集のエフェクターとして、その小型RNAを標的する特徴に注目してCas13d(CasRx) [*]を選択し、転写産物を標的とする標的遺伝子のノックダウンを試みた。
  • 標的遺伝子は、近年、その発現をノックダウンするだけで、マウス線維芽培養細胞とマウス神経芽細胞腫N2a細胞を機能を帯びた神経細胞へと転換可能であることが報告されたポリピリミジントラクト結合タンパク質1をコードする遺伝子Ptbp1に注目した。この転換はin vitroで実証された、in vivoでの検証は行われてこなかった。
  • 網膜が正常な成体マウスと薬剤で網膜神経節細胞 (retinal ganglion cell, RGC)を欠損させた網膜損傷成体モデルマウスに、Ptbp1を標的とするCasRx-sgRNA (sgRNA 2種類)をAAVにて網膜下注射することで、想定通りPtbp1ノックダウンを実現した。その結果、ミューラーグリア(Müller glia, MG)細胞のRGCへの転換が進行し、RGCSから外側膝状体(lateral geniculate nucleus, LGN)と上丘 (superior colliculus, SC)への投射も確立され、さらに、網膜損傷成体モデルマウスにて視覚が一部回復することを見出した。
  • 同様にCasRx-gRNAをAAVにて、パーキンソン病モデル成体マウスの線条体に定位的注入することでPtbp1をノックダウンし、局所的にドーパミン作動性のマーカを発現する神経細胞が誘導され、さらに、中脳におけるドーパミン作動性神経細胞欠損から生じる運動機能障害が緩和されることを見出した。
 CasRxを介したPtbp1イタノックダウンによって、グリア細胞の神経細胞への転換を介して、必要な型の神経細胞を補充することが可能であることが実証された。

[*] CasRx参考記事: crisp_bio 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報(Salk研;Arbor Biotechnologies/NCBI)