[出典] "SARS-CoV-2 serological analysis of COVID-19 hospitalized patients, pauci-symptomatic individuals and blood donors" Grzelak L et al. medRxiv 2020-04-24. (査読無し投稿)

 COVID-19パンデミックにあたり、症状を示す感染者だけでなく無症候性の感染者症状の広がりと、SARS-CoV-2に対する抗体のプロファイルを捉える必要がある。
 パスツール研を始めとするフランスの研究グループは今回、2019年より以前
(フランスでのエピデミック発生以前)に採取されていた491名のサンプル、Bichat病院 (パリ)入院患者51名、軽症な (pauci-symptomatic)感染者209名、および、オアーズ地方の献血者200名からのサンプルを対象として、抗SARS-CoV-2抗体のプロファイリングを試みた。

アッセイ法
  • ウイルスの核タンパク質 (N)全長または三量体スパイクタンパク質 (tri-S)の外部ドメインを検出する2種類のELISAアッセイをパスツール研で実装した。
  • また、新たな手法2種類を実装した: フローサイトメトリーにより細胞表面に発現しているSタンパク質 (全てのドメインとコンフォメーション)を検知するS-Flowアッセイ; 免疫沈降法により、S1またはN C末端ドメインを含む多様な抗原を検知するLIPSアッセイ
  • さらに、2種類の中和抗体アッセイも試みた:  感染性SARS-CoV-2のマイクロ中和 (microneutralisation, MNT)アッセイ; レンチウイルス-Sシュードタイプに基づくアッセイ
4種類の抗体アッセイと2種類の中和抗体アッセイの結果
  • 4種類の抗体アッセイは概ね同様な結果を出すが、抗体レベルが高い場合に結果が良く一致し、抗体レベルが低い場合に差異が大きくなる傾向と示し、対象とする抗原や技術的な違いに起因する感度の違いも見られた。
    軽症者では、S-FlowとELISA tri-Sの結果がよく一致し、かつ、他のアッセイよりも高感度であり、献血者サンプルでは、この2種類のアッセイでのみ抗体が検知された。
  • 入院患者 (重症・重態)では、発症後5-14日の間に、抗体陽転と中和が進行した。
  • 軽症者では、29%が発症後15日以内に血清陽性を示した。
  • 高校でのクラスターが発見されたオアーズ地方の健常な献血者の3%が血清陽性を示した。
  • 2種類の中和抗体アッセイの結果は整合し、9名の入院患者に限られた例についての検証であるが、抗-全長S抗体および抗-N抗体のレベルと、血清の中和活性とが相関することも見出した。
  • 研究グループは現在 (投稿時)、軽症者または無症候性の血清陽性者におけるウイルス中和を推定可能とする条件 (抗体のレベルやウイルスタンパク質の種類)の同定を進めている。
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