ナノボディとは
  • ラマやアルパカなどのラクダ科動物の抗体の中には、軽鎖を伴わず重鎖だけで形成される抗体が存在し、その重鎖の可変領域はVHH (variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)抗体、単一ドメイン抗体、また、通常の抗体のサイズ150-160 kDaに対して12-15 kDaと小型であることから、nanobody (Wikiedia)/ ナノボディ(PDBj 今月の分子参照)とも呼ばれている [Wikipediea引用下図参照]。Nanobody
  • ナノボディは小型であることから、化学修飾や抗体薬物複合体への展開が容易であり、大腸菌や酵母を製造工場として利用可能である。
  • サイズが小さいことに加えて、通常の抗体の半分の数の3つのループ状の相補性決定領域 (CDR1/2/3)で抗原に結合することも特徴であり、これもあって、通常の抗体が入り込めないような領域に位置する抗原を認識することが可能になる。また、CDR1とCDR3のループがより長いことが、結合親和性と特異性に有利に働く。
  • CDR以外の領域にも特徴がある。CDRつなぐ領域 (framework region)に多く分布する親水性アミノ酸が水溶性を高め、また、温度やpHの変化に対してより安定である。
  • こうした特徴を備えていることから、ナノボディに基づく診断薬や治療薬の開発が注目を集め、2019年には、2価のナノボディ caplacizumab (Cablivi)が、後天性血栓性血小板減少性紫斑病治療薬としてFDAに承認された。
ナノボディ作出法
  • 抗原で免疫したラマやアルパカなどの動物から血液を採取し、そのB細胞から可変領域を含むcDNAライブラリーを構築し、種々のディスプレイ法に組み込みスクリーニングし、固定化した抗原を使って、候補ナノボディを確認し、in vitro/in vivoでの機能解析や標的との複合体構造解析へと進む。
  • 東南大学が構築・提供し、2,391種類のナノボディのデータが蓄積されているInstitute Collecsion & Analysis Nanobody (iCAN) データベースの配列から、ナノボディー開発を進めることも可能である。
[crisp_bio注] 本記事は 「ラマとアルパカに由来するナノボディーが、SARS-CoV-2を封じ込める (2) 」に続きます。

ナノボディ/VHH参考図

[出典] [MINI REVIEW ARTICLE] "Camelid Single-Domain Antibodies As an Alternative to Overcome Challenges Related to the Prevention, Detection, and Control of Neglected Tropical Diseases" Fernandes CFC [..] Stabeli RG. Front Immunol 2017-06-09 Nnobody
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