2020-06-10 PDB/EMDBにて構造情報公開: PDB-7BYR; EMD-30247
2020-05-20 初稿

[出典] "Potent neutralizing antibodies against SARS-CoV-2 identified by high-throughput single-cell sequencing of convalescent patients'B cells" Cao Y, Su B, Guo X, Sun W, Deng Y, Bao L, Zhu Q [..] Qin C, Qin X, Jin R, Xie XS. Cell 2020-05-17. 

 北京大学、首都医科大学、人民解放軍陸軍士官学校軍事医学科学アカデミー、北京協和医学院などの研究グループは今回、COVID-19から回復した患者60名の検体から抗原結合B細胞のシングルセルRNA-seq/VDJ-seq [*]を介して、IgG1抗体を発現するクローン型を特定し、SARS−CoV-2に対する結合親和性と中和活性を評価し、SARS-CoV-2中和抗体を迅速同定した [*参考 Chromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューション]
  • 抗原結合IgG1陽性クローン8,558種類から14種類の中和抗体候補を同定し、その中で最も高活性なBD-368-2を特定した。
  • BD-368-2は、シュードタイプ(生化学, 2017)のSARS-CoV-2および患者から分離されたSARS-CoV-2 (2019-nCoV BetaCoV/Wuhan/AMMS01/2020) に対して、それぞれ、IC50値 1.2 ng/mLと15 ng/mLの中和活性を示した。
  • BD-368-2はまた、ヒトのACE2を組み込んだマウスにSARS-CoV-2を感染させるモデル実験において、顕著な治療効果と予防効果を示した。
  • また、中和抗体BD-23のFavとSARS−CoV−2スパイク (S)タンパク質の外部ドメイン三量体との複合体の構造を、クライオ電顕法で 3.8Å分解能で再構成し、BD-368-2のエピトープが、Sタンパク質のACE2受容体結合ドメイン (RBD)のACE2結合モチーフに重なることを同定した。
  • また、SARS-CoV-2とSrAS-CoVの間でアミノ酸配列と構造の保存性が高いことから、SARS-CoV-2中和抗体を、CDR3重鎖の予測構造のSARS-CoV中和抗体へのそれに対する類似度に基づいて、SARS-CoV-2中和抗体を、膨大なクローン型から直接選別可能なことも示した。
 本研究において、SARS-CoV-2中和抗体を発見すると共に、パンデミックに至った感染症に応答するヒト中和抗体を、ハイスループットなシングルセルB細胞シーケンシングから効率的に同定可能なことも示した。

[関連crisp_bio記事]