1. 抗-CRISPR (Acr)ファインダー:バクテリア/アーケアとそのウイルスからAcrオペロンを同定
 U Nebraska, 南開大学などの研究グループが、配列からのAcr同定に用いられてきた3種類の戦略 (相同性検索; Aca (Acr-associated regulaor)との連座/guilt-by-association(GBA); CRISPR-Casの自己ターゲッティングスペーサ)を融合したAcrFinderを開発し、実験で確認されたAcr-Acaオペロン群を対象とするLeave-one-out cross validation法でリコール率100%を達成した (参考 Table 1にAcr関連情報資源のリスト、Figure 2 にAcrFinderのワークフロー図あり)。
 また、Webサイトhttp://bcb.unl.edu/AcrFinderから公開するとともに、AcrFinderによる解析から得られたAcrsとAcasをデータベースから公開した。なお、AcrFinderは塩基配列とアミノ酸配列の双方を入力として受け付ける。
[出典] "AcrFinder: genome mining anti-CRISPR operons in prokaryotes and their viruses" Yi H [..] Yin Y. Nucleic Acids Res 2020-05-13

2. 遺伝性DYT1ジストニア症のCRISPR療法
 標題疾患はTOR1A遺伝子のヘテロ型変異c.907_909delGAGのドミナントネガティブな作用に因る。Massachusetts General Hospitalを主とする研究グループは今回、ジストニア症患者由来線維芽細胞において、病因変異を帯びたアレルに特異的に発生するAGAT配列を認識するSpCas9変異体 (SpCas9-VRQR)-sgRNAにより、変異torsinA遺伝子発現を特異的に抑制し、野生型torsinA遺伝子の機能を引き出すことに成功した。
[出典] "Mutant Allele-Specific CRISPR Disruption in DYT1 Dystonia Fibroblasts Restores Cell Function" Cruz L,  György B [..] Breakefield XO. Mol Ther Nucleic Acids 2020-05-15

3. EGFRを標的とするCRISPR/Cas9またはスニチニブとの併用が、腎細胞がん療法候補である
 癌研究を始めとして広く利用されているHEK293, A549, HelaおよびDLD1といった細胞株に対して、腎細胞癌由来RC21細胞株ではEGFRが高発現している。CRISPR/Cas9によるEGFRノックアウトが、腫瘍細胞増殖を抑制し、MAPK (pERK1/2)を活性化するところ、VEGFRとPDGFRの阻害剤スニチニブを加えることで、MAPK (pERK1/2)とpAKTの発現を抑制し、EGFR KO細胞の増殖をさらに抑制する。一方で、EGFR欠損は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 SAHAとシスプラチンに対する耐性をもたらし、また、G2/M期アレストを誘導し、癌細胞にアポトーシスを誘導するTRAILに耐性をもたらした。
[出典] "CRISPR-mediated ablation of overexpressed EGFR in combination with sunitinib significantly suppresses renal cell carcinoma proliferation" Liu B [..] Haisma HJ. PLoS One 2020-05-15

4. MLPA法を利用して、イネにおけるCRISPR/Cas9誘導変異と自然突然変異を、効率的に識別する
 上海交通大学などの研究グループが、MLPA法を利用することで、CRISPR/Cas9のオンターゲット編集、オフターゲット編集、ならびに、自然突然変異に由来するINDELsを同時に1塩基分解能で同定し、また、CRISPR/Cas9変異体の自然変異と接合性を同定
[出典] "Effective identification of CRISPR/Cas9-induced and naturally occurred mutations in rice using a multiplex ligation-dependent probe amplification-based method" Biswa S [..] Shi J. Ther Appl Genet 2020-05-14.

5. Cas12bによるシロイヌナズナの遺伝子編集
 河北科技大学を主とする研究グループが、Bacillus hisashii 由来BhCas12bとBacillus sp. V3–13由来BvCas12bのいずれも、標的部位への変異誘導、多重編集、大規模領域の削除を実現し、オフターゲット候補部位の編集を誘導しないことを示した。
[出典] "Targeted Mutagenesis in Arabidopsis thaliana Using CRISPR-Cas12b/C2c1" Wu F [..] Kong D. J Integr Plant Biol 2020-05-12

6. CRISPR/Cas9によるクラミドモナス・ゲノム標的部位への挿入変異を誘導する法"TIM"
 Cas9-gRNA RNPと、抗生物質耐性カセットと相同アームを帯びたdsDNAドナーをエレクトロポレーション法またはガラスビーズ法を介して、gRNA標的部位に挿入する戦略に加えて、パラメーターを最適化することで、標的部位への変異誘導を40-95%の効率で実現し、また、二重変異の同時誘導も実現した。
[出典] "TIM, a targeted insertional mutagenesis method utilizing CRISPR/Cas9 in Chlamydomonas reinhardtii" Picariello T [..] Witman GB. PLoS One 2020-05-13