[出典] "Antibody−PROTAC Conjugates Enable HER2-Dependent Targeted Protein Degradation of BRD4" Maneiro M [..] Tate W. ACS Chem Biol 2020-04-27.

背景
 「アンドラッガブルなタンパク質には阻害よりも分解」として、次世代創薬として注目を集めているPROTACは、ユビキチンガーゼを標的タンパク質に近接させることで、標的タンパク質をユビキチン化し、内在ユビキチンプロテアソーム系での分解へと誘導する分子であり、PROteolysis TArgeting Chimeraの略称にあたる [OpenWetWare Webサイトから引用した下図参照]。PROTAC
概要
  • プロタックによって多様なタンパク質を効果的に分解可能なことが実証されてきたが、臨床へと展開するには、特定の細胞型や組織型に限定して標的タンパク質を分解する制御することが、課題であった。Imperial College LondonとUniversity College Londonの研究グループは今回、特定の細胞の表面抗原を認識する抗体にPROTACをガイドさせる手法を設計・実証した。
  • 具体的には、HER2タンパク質に結合するトラスツズマブにリンカーを介してケージ化した状態のPROTACを結合し (Ab-PROTAC)、標的細胞での内在化に続くリンカーの加水分解を経て、PTOTACが標的タンパク質分解の活性を発揮する手法である [Figure 1引用下図 A 参照]。Ab-PROTAC
実証実験
  • ブロモドメインを含むタンパク質4 (BRD4)を標的とするAb-PROTACを構築し、ヒト乳腺癌由来細胞株の中で、HER2陽性のSK-BR-3細胞とBT-474細胞には内在化され、標的であるBRD4を分解することを実証した。このAb-PROTACは一方で、HER2を発現していないあるいは発現レベルが極めて低いMCF-7細胞とMDA-MB-231細胞への内在化が限定的であり、ひいては、BRD4の活性化が見られないか、見られても極めて限定的であることも同定した。
  • 共焦点顕微鏡での生細胞イメージングによって、HER2陽性細胞でのAb-PROTACの内在化とリソソームへの輸送、Ab-PROTACからBRD4タンパク質を分解にするに十分な量の活性なPROTACが遊離することを確認した。
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