[出典] "Human neutralizing antibodies elicited by SARS-CoV-2 infection" Ju B, Zhang Q, Ge J [..] Wang X, Zhang Z, Zhang L. Nature 2020-05-26.(This is an unedited manuscript that has been accepted for publication)/bioRxiv 2020-03-26 "Potent human neutralizing antibodies elicited by SARS-CoV-2 infection" ; [構造情報] 7BWJ : P2B-2F6/SARS-CoV-2 RBD複合体構造

 SARS-CoV-2は、そのスパイク(S)タンパク質の受容体結合ドメイン (RBD)がヒト細胞ACE2受容体に結合することで、ヒト細胞へ侵入する。南方科技大学, 清華大学などの中国研究グループは、深センのCOVID-19患者8名 (6名は武漢訪問歴があり2名は濃厚接触者; 7名は回復)のB細胞から、206種類のRBD特異的モノクローナル抗体 (mAb)を分離し分析した。
  • SARS-CoV-2に対する中和活性を帯びたmAbsを発見したが、中和活性のレベルは患者間で変動し、ACE2と競合するRBDに対する結合親和性と相関していた。
  • 驚くべきことに、COVID-19患者の血漿はSARS-CoV-1とMERS-CoVのSタンパク質と交差反応した一方で、患者の血漿も抗SARS-CoV-2 mAbも、SARS-CoV-1とMERS-CoVのRBDsとは交差反応しなかった (すなわち、SARS-CoV-2中和抗体は、双方に対して中和活性を示さない)。したがって、3種類のCoVのRBDsは、配列や立体構造は類似しているが、免疫学的には互いに独立であり、抗体の交差反応性はSタンパク質上のRBD以外の領域に起因することが示唆された。
  • IDをP2B-2F6とした中和抗体についてRBDとの結晶が得られ、複合体構造を2.85 Å分解能で解くことができた。RBD/P2B-2F6とRBD/ACE2の結晶構造を重ね合わせることで、P2B-2F6が立体障害作用を介して、ウイルスのACE2への結合ひいては細胞への侵入を阻害する構造基盤が明らかになった (P2B-2F6の軽鎖の6残基がACE2の5残基とクラッシュ; P2B-2F6とACE2のRBD結合親和性はそれぞれ5.14nMと4.70 nM)。
  • 今回得られた中和抗体はSARS-CoV-2の治療薬候補である。
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