[出典] "Cas12a Base Editors Induce Efficient and Specific Editing with Low DNA Damage Response" Wang X, Ding C, Yu W [..] Liu Z, Yang L, Chen J. Cell Rep 2020-06-02 
[注] BEACONは、"base editing induced by human APOBEC3A and Cas12a without DNA break"に由来する

背景

 責任著者の上海科技大学のLi Yang, Jia Chenらは、2017年にNature Structural & Molecular Biologyに, 塩基エディターBE3 (Cas9n (D10A)+APOBEC3)において、APOBEC3によりCから変換されたUが、二本鎖DNAの切断 (DSB)に続くDNA損傷修復応答 (DDR)を誘導し、その結果、望ましくないindelsがオンターゲットに誘導されることを指摘した [1]。C-to-Tを実現するCBEsについてはその他にも、DNAだけでなくRNAに対しても望ましくない変換や変異を誘導すること [2]、および、その対策 [3]が報告されてきた。
 YangとChenらはまた、2018年には、Cas9nに代えてLbCas12a (当時はCpf1)とrAPOBEC1 (rA1)を融合したrA1-dCpf1-BEによってヒト細胞において、C-to-T変換の標的可能領域の拡大、同時に、indels、誤変換およびオフターゲット編集の抑制を実現していた [4]。一方で、dCas12a-BEsの変換効率はCas9n-BEsよりも低く、また、モデル動物in vivoでの変換に至らなかった。

 成果
  • 研究グループは今回、先行研究のrA1-dCas12a-BEが誘導するDSBが基底レベルであり、H2AX, ATM, ATRおよびp53を含むDNA損傷応答 (DDR)タンパク質の活性化が最小限であることを確認した。
  • 続いて、rA1の他のAPOBEC/AIDファミリーの選別と加工を経て、変換効率と変換の選択性が高いヒトAPOBEC3A (hA3A)-dCas12a-BEsにたどり着き、これを、BEACONと称した。
  • BEACONは、ヒト細胞株において、AncBE4max [5]に匹敵する変換効率を示した。また、DSBを引き起こすこと無くDDRを基底レベルに留め (ひいてはオンターゲットでのindels発生を抑制し)、RNAのオフターゲット編集も基底レベルに留めた。
  • BEACONはまた、rA1-dCas9-BEとは異なり、マウス胚のマイクロインジェクションすることで、F0マウスにてC−to−T変換が実現することを、実証した [BEACONと先行研究のrA1-dCas12a-BEを対比したFigure 7を参照]。
引用crisp_bio記事
  1. CRISPRメモ_2017/12/20 [第2項] CRISPR技術による遺伝子編集にあたり、APOBEC3が誘導する変異スペクトラム;  "APOBEC3 induces mutations during repair of CRISPR–Cas9-generated DNA breaks" Lei L, Chen H, Xue W, Yang B, Hu B [..] Shen B, Yang L, Chen J. Nat Struct Mol Biol 2017-12-11
  2. crisp_bio 2019-03-02 C-to-T塩基編集(BE3)は、イネでもマウスでも、大規模なオフターゲット変異を伴う
  3. crisp_bio 2020-05-26 CBEのオンターゲット活性を維持しつつDNAとRNAに対するオフターゲット編集を抑制
  4. CRISPRメモ_2018/03/21 [第1項] Cpf1とシチジンデアミナーゼの融合による1塩基編集 (BE); "Base editing with a Cpf1–cytidine deaminase fusion" Li X, ~ Huang X, Yang L, Chen J. Nat Biotechnol 2018-03-19
  5. CRISPRメモ_2018/05/30 - 3 [第1項] 塩基エディターBE4とABEを、BE4max / AncBE4max / ABEmaxへと強化