[出典] "A Mouse Model of SARS-CoV-2 Infection and Pathogenesis" Sun SH, Chen Q, Gu HJ, Yang G, Wang YX, Huang XY [..] Fan CF, Zhou YS, Qin CF, Wang YH. Cell Host Microbe 2020-05-27.

 State Key Laboratory of Pathogen and Biosecurity (AMMS), State Key Laboratory of Proteomics, National Institutes for Food and Drug Controlなどの中国機関の研究グループは、新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)の受容体と特定されているヒトACE2 (hACE2)をCRISPR/Cas9技術でノックインしたマウスが、COVID-19モデルマウスとして利用可能なことを示した。
  • 研究グループは、hACE2の全長cDNAを、マウスのX染色体のGRC m38.p6サイトに位置するmAce2遺伝子のExon2にノックインし、mAce2プロモーターを介してhACE2が発現することを確認した。hACE2は、野生型マウスでのhAce2の発現に似て、気管、肺と腎臓で高発現し、肝臓、脾臓、小腸でも発現が見られた。一方で、hACE2のホモ型ノックインマウスではmAce2の発現が消失し、ヘテロ型ノックインマウスにおいてもmAce2の発現が顕著に低下した。研究グループはホモ型ノックインマウスをhACE2-KI/NIFDCと命名した (短縮してhACE2マウス)。
  • hACE2マウスに鼻腔内接種したSARS-CoV-2は、肺、気管、および脳において増殖し、感染した老齢マウスに間質性肺炎とサイトカインレベル上昇をもたらした。ただし、感染による致死性は見られなかった。
  • 研究グループは、COVID-19患者に下痢、腹痛および嘔吐の症状が見られたことから、hACE2マウスの胃内へSARS-CoV-2 (4x10の6乗 PFU)注入し、5日間後にウイルス量を測定したところ気管と肺にて10の6乗 copies/gのレベルのウイルス量が検出され、また、SARS-CoV-2 Sタンパク質が肺気道で検出され、間質性炎症も見られた。
  • 一方で、野生型マウスの鼻腔内または胃内に接種したSARS-CoV-2は、感染・増殖することはなかった。
 hACE2-KI/NIFDCは、ウイルス感染と発症の機序の解明やCOVID-19のワクチンと療法の評価に利用可能なCOVID-19モデルマウスである。