[出典] "Prediction of the sequence-specific cleavage activity of Cas9 variants" Kim N, Kim HK [..] Kim HH. Nat Biotechnol 2020-06-08

 CRISPR-SpCas9によるゲノム編集の精度向上やPAM改変を介した柔軟な編集の実現を目指して、SpCas9の改変体が作りだされてきたが、標的配列と応用目的に最適な改変体を選択する指針は見えていない。

 DeepCas9を開発 [1] した延世大学校医科大学を主とする研究グループは今回、13種類のSpCas9改変体がそれぞれ標的配列に特異的な切断活性を示すコンピュータ・モデルDeepSpCas9variantsを開発し、標的配列を入力することでSpCas9改変体の切断活性スコアを知ることができるWebサイト(http://deepcrispr.info/DeepSpCas9variants/から利用可能とした [Webサイト画面キャプチャ右下図参照]。DeepSpCas9variants
  • はじめに、HEk293T細胞においてSpCas9改変体とsgRNAsをレンチウイルスを介して発現させ、13種類のSpCas9改変体 [*]についてのべ26,891種類の標的配列の切断効率を評価し、256種類の4塩基 (NNNN)配列の中の156種類が、少なくとも1種類のSpCas9改変体のPAM配列として機能することを同定した
    [*] 野生型SpCas9, eSpCas9(1.1), SpCas9-HF1, HypaCas9, evoCas9, xCas9, Sniper-Cas9, SpCas9-NG, VQR, VRER, VRQR, VRQR-HF1ならびにQQR1。
  • 切断活性に利用したsgRNAライブラリとして、スキャフォールドを5bp伸長し変異を導入したsgRNA [2]と高精度版Cas9の効率向上に開発されたtRNA-gRNA [3]の2種類に基づいて3種類構築した。
  • いわゆる高精度なSpCas9改変体の総合的な活性のランキングは、SpCas9 ≥ Sniper-Cas9 > eSpCas9(1.1) > SpCas9-HF1 > HypaCas9 ≈ xCas9 >> evoCas9の順になったが、標的切断の特異性 (精度)はevoCas9 >> HypaCas9 ≥ SpCas9-HF1 ≈ eSpCas9(1.1) > xCas9 > Sniper-Cas9 > SpCas9の順になった。
  • これらのデータをもとに、30-ntの長さの配列 (4-bp | 20-bpプロトスペーサー | 4-bp PAM | 2-bp)を対象として、9種類のSpCas9改変体 (SpCas9, eSpCas9(1.1), SpCas9-HF1, HypaCas9, evoCas9, Sniper-Cas9, VRQR変異型, xCas9ならびにSpCas9-NG)について、編集活性を精密に予測する深層学習 (CNNベース)モデルを構築し [Supplementary p31 Figure 15参照]、XGBoostとSHAPを介して活性に最も影響を及ぼす配列の特徴量20種類も同定した。
 [関連crisp_bio記事]
  1. CRISPRメモ_2019/05/17-1 [第1項]  SpCas9活性の深層学習モデルDeepCas9
  2. CRISPR関連文献メモ_2015/12/25 [第4項] [論文] CRISPR/Casのノックアウト効率を、sgRNAの構造最適化によって実現
  3. CRISPRメモ_2019/04/29 [第1項]  高精度版CRISPR-Cas9の活性を、tRNAGlnプロセシング・システムを利用して、ブーストする