[出典] REVIEW "Harnessing the type I CRISPR-Cas systems for genome editing in prokaryotes" Xu Z, Li Y, Li M, Xiang H, Yan A. Environ Microbiol 2020-06-08

 CRISPR-Casシステムは、単一のタンパク質がエフェクターとして機能するクラス2と、タンパク質複合体がエフェクターとして機能するクラス1に大別されており、その~90%をクラス1が占める。少数派のクラス2 CRISPR-Casシステムのエフェクターが、Cas9, Cas12a, Cas13など、真核生物のゲノム編集に広く活用されてきたが、原核生物のゲノム編集には広がっていない。原核生物のバクテリアが極めて多様なDNAホメオスタシスを備え、また、ジェノタイプによってはクラス2のエフェクターCasの過剰発現が細胞死を招くためである。

 クラス2に遅れをとってたが、内在するクラス1 CISPR-Casシステムによる原核生物のゲノム編集が広がり始めている。特に、遺伝子操作が難しかった非モデル微生物の種や株のゲノム編集に成果を上げつつある。香港大学と中国科学院微生物研究所の研究チームが今回、クラス1の中でタイプI CRISPR-Casシステムの概要と応用をレビューした:
  • クラス1 CRISPR-Casシステムの構成と機序
  • 内在タイプI-CRISPR-Casシステムを原核生物自身のゲノム編集の転用するための関心のある遺伝子(GOI)を標的可能とするミニマムなCRISPRアレイの合成から始まる標準的ワークフロー (レビューFigure 2参照)
  • 各タイプ (I-A, I-B, I-E, およびI-F)の特徴と応用
  • ゲノム編集を左右する因子がもたらす課題と解決法 (プラスミド構築と送達; 相同組換えによるDNA修復; MDR臨床株に見られる偽陽性; anti-CRISPR (Acr)とR-Mシステム)
  • 将来展望 (クラス1タイプIII-B CRISPR-Casを介したS. islandicus in situ遺伝子タギング [*]などに言及)
  [引用文献と関連crisp_bio記事]