HMS (Harvard Medical School)にBioqualやJanssen Vaccines & Prevention BVなども加わった研究グループが新型コロナウイルスに対するDNAワクチンの効用をアカゲザルで評価した結果と、同じくアカゲザル・モデルでの再感染に対する免疫応答を解析した結果を、Science誌から5月20日に発表していた:

1. "DNA vaccine protection against SARS-CoV-2 in rhesus macaques" Yu J [..] Barouch DH. Science 2020-05-20
  • SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質から抗原が異なる種々のDNAワクチン候補を作出し35頭のアカゲザルで評価したところ、液性免疫と細胞性免疫が見られた。その中には、回復期患者およびSARS-CoV-2を感染させたアカゲザルに見られた中和抗体と同等の抗体価の中和抗体も見られた。
  • Sタンパク全長をコードしたワクチンを投与したアカゲザルは、ウイルス感染実験後の気管支肺胞洗浄と鼻粘膜でのウイルス量が、偽薬投与群のウイルス量から大幅に低減された。
  • また、免疫応答がウイルスからの保護をもたらしたことを示唆する中和抗体の抗体価とウイルス感染予防効果の相関関係が見られた。
2. "SARS-CoV-2 Infection Protects Against Rechallenge in Rhesus Macaques" Chandrashekar A [..] Barouch DH. Science 2020-05-20

 研究グループは始めに、アカゲザルをSARS-CoV-2に曝露させ、上気道と下気道での高ウイルス量、液性免疫応答と細胞性免疫応答およびウイルス性肺炎の病理を示す新型コロナウイルスモデル9頭を作出した。
  • ウイルス量は暴露後から数日で低下しはじめ、観察期間中の死亡例は見られなかった。
  • 続いて、ウイルス量がほぼゼロになり症状も見られなくなる初回暴露後から35日後に、SARS-CoV-2に再暴露し、その気管支肺胞洗浄と鼻粘膜でのウイルス量(中央値)が、ポジティブコントロール (初めて暴露したアカゲザル)に対して著しく低いことを見出した。この再暴露後のウイルス感染抑制は、初回の感染が、再暴露に対して有効な免疫応答をもたらすことを示唆した。
  • ただし、著者らは結論部分で、アカゲザルでの結果は必ずしもヒトへ外挿できるわけではなく、それには厳密な臨床研究が必要であると、注意喚起した。