[出典] "CRISPR-assisted detection of RNA–protein interactions in living cells" Yi W, Li J, Zhu X, Wan X [..] Chan KM, Zhang L, Yan J. Nat Methods 2020-06-22. 
[crisp_bio] CAPIDCRISPR-assisted RNA–protein interaction detection methodに由来する

 近年、サイズが200 nt以上のncRNAであるlncRNAsが重要なエピゲノム調節因子であることが広く認められ、このlncRNAsとRNA結合タンパク質 (RBPs)の相互作用を生細胞内で解析することが望まれてきた。これまでの技術の殆どは、化学的または紫外線を介しRNAとタンパク質を架橋した複合体を分離する手法に依存し、偏りを生じ生理学的相互作用がマスクされてしまうリスクを伴っていた。

 2018年にビオチンリガーゼを利用する近接依存性標識法に基づいたRaPID[1]が開発され、RNAに非特異的なバックグラウンドノイズが大きく低減されたが、解析対象とするRNAのモチーフにBoxBステムループを接合し異所的に発現させる必要があるため、可用性が低かった。

 西北大学と香港城市大学を主とする研究グループは今回、ビオチンリガーゼを関心のある遺伝子座 (以下、LOI)へとdCas9により誘導することでLOIに結合するタンパク質を同定するGroPro[2]に触発されて、CRISPR技術を利用して関心のあるRNA (以下、ROI)に結合するタンパク質を生細胞内で同定可能とするCRISPR-assisted RNA–protein interaction detection method (CAPID)法を開発した。

CAPID
  • DNAを標的とするCas9の不活性化版dCas9に代えて、RNAを標的としコンパクトなCasヌクレアーゼCasRxの不活性化版dCasRxを選択した [3]
  • このdCasRxにRaPID法で開発されたビオチンリガーゼBASUを融合した。dCas9-BASUに近接したタンパク質はビオチン化され、ストレプトアビジン・ビーズに補足され、質量分析とウエスタンブロッティングに供される [Figure 1参照]。
  • BASU-dCasRxには、複数ヶ所を標的するgRNAsアレイを組合せ、バック図ラウンドノイズの低減を実現した。
XISTなどによる実証実験
  • 不活性なX染色体 (Xi)から特異的に発現するXISTはよく知られたlncRNAである。X染色体の不活性化 (XCI)を制御するこのXISTをモデルとしてCARPIDを評価した。HEK293T細胞に、BASU-dCasRxと、ヘアピン構造以外の領域の3ヶ所を標的するgRNAsを導入した。
  • 3セットのgRNAsについて実験をそれぞれ3回繰り返し、XIST相互作用タンパク質を同定した。3セット全て、少なくとも2セット、および、少なくとも1セットで同定されたタンパク数はそれぞれ、13種類、23種類、および73種類となった。
  • 73タンパク質のうち19種類は、コヒーシンのサブユニット (RAD21とSMC1A), ATRX, ならびにBRG1を含む既報のタンパク質であった。
  • 一方で、既報のタンパク質の中に、SPENとRBMのように質量分析ではペプチドが検出されたが、評価基準を満たさず、XIST結合タンパク質と判定しなかったものも存在した。これらは、相互作用が微弱かまたは結合が短時間であるためと考えられる。
  • GO解析からは、XIST結合タンパク質の多くが、クロマチンの修飾とリモデリングに関与していた。
  • CARPIDから得られた新奇なXIST結合タンパク質候補としてTFIIDのサブユニットであるTATA-box binding protein associated factor 15 (TAF15)について、HEK293T細胞において補足実験を行い、TAF15がXIST結合タンパク質であることを確定した。
  • その他にも、ISWI ,SNF2L, SMC1AおよびRAD21についてもXIST結合タンパク質であることを確認した。TAF15とSNF2Lについては、マウス雌の胚線維芽細胞における機能解析実験を行い、XCIに関与することを確認した。
  • CAPIDがDANCRMALAT1のバインダーの同定にも有用であることを示した。
[参考文献とcrisp_bio記事]
  1. "RNA–protein interaction detection in living cells"  Ramanathan M [..] Khavari PA. Nat Methods 2018-02-05. [Figure 1]
  2. CRISPRメモ_2018/05/08 - 1 [第2項] dCas9-APEXによる遺伝子座特異的プロテオミクス'GloPro'
  3. 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報 - Cas13d/CasRx 
  4. 2018-11-30 新たな近接依存性標識法"Proximity-CLIP"によるRNA-タンパク質結合とRNA局在化の精密解析 
  5. 2019-11-21 CRISPR-Cas13によりRNAの生細胞内動態を可視化- dCas13b; [プロトコル] "Protocol for Dynamic Imaging of RNA in Living Cells by CRISPR-Cas13 System" Wang Y, Yang LZ, Chen LL. STAR Protocols 2020-06-03
  6. 2020-06-02 RNA-RNAの相互作用をヒト細胞内で同定可能とするRIC-seqの開発と検証