[出典] "Chlorin e6 and CRISPR-Cas9 dual-loading system with deep penetration for a synergistic tumoral photodynamic-immunotherapy" Yang C [..] Qian Z. Biomaterials 2020-06-14

 光線力学的療法 (photodynamic therapy; PDT)は 原発腫瘍 (特に表皮癌)治療に有望であるが、遠位の転移腫瘍にはほとんど奏効しない。四川大学生物治療協同創新中心 (Sichuan University and Collaborative Innovation Center of Biotherapy)の研究グループは今回、原発腫瘍と転移腫瘍の双方に奏効する療法確立を目指して、PDTにCRISPR-Cas9遺伝子編集を介した免疫療法を組合せた多機能ナノシステム'HPR@CCP'を開発した。
  • HPR@CCPナノ粒子は、Ptpn2遺伝子を標的するCRISPR-Cas9 (以下, Cas9-Ptpn2)と、ミトコンドリアを標的するクロリン e6の改変体 (以下, TPP-PEI-Ce6)からなる正電荷を帯びたコア、負電荷を帯びたヒアルロン酸のシェルを静電的に吸着させた構造をしている。
  • HPR@CCPナノ粒子のマウスメラノーマ由来B16F10細胞へのトランスフェクション効率は極めて高かった。
  • マウスin vivoで腫瘍に能動的または受動的に蓄積したHPR@CCPナノ粒子内のCas9-Ptpn2Ptpn2遺伝子 [*]を破壊し、IFN-γとTNF-αシグナル伝達の活性化とCD8陽性T細胞の増殖促進を介して免疫療法に対する腫瘍の感受性を高めた。
  • TPP-PEI-Ce6は、レーザー照射に応じて活性酸素の一種であり細胞破壊効果を示す一重項酸素を効率良く誘導した。
  • シェルの構造体として利用したヒアルロン酸をヒアルロニダーゼで分解することで、Cas9-Ptpn2と酸素の浸透性を高めた。
  • HPR@CCPナノ粒子は、モデルマウスにおいて、原発腫瘍と転移腫瘍の双方の増殖を抑制した。
関連crisp_bio記事
  1. [*] CRISPR関連文献メモ_2017/07/21 [第5項] 移植癌マウスモデルin vivoにて、プール型CRISPR-Cas9機能喪失スクリーンにより、腫瘍免疫療法に対して感受性を亢進あるいは耐性を付与する遺伝子を同定
  2. 2017-04-28 光免疫療法 (photoimmunotherapy)で制御性T細胞を癌組織特異的に壊死させる