[出典] "Repurposing type I–F CRISPR–Cas system as a transcriptional activation tool in human cells" Chen Y, Liu J [..] Liang P, Songyang Z. Nat Commun 2020-06-19

 クラス2 CRISPR-CasはCRISPR-Casシステムの~10%を占めるに過ぎないが、タイプ IIのCas9, タイプ VのCas12, タイプ VIのCas13などのヌクレアーゼが、ゲノム編集と転写調節のツールとして広く利用されている。一方で、クラス1タイプ1のCRISPR-CasはCRISPR-Casシステムの~60%を占めているが、哺乳類のゲノム編集と遺伝子発現調節への利用は、タイプI-BとI-Eシステムに限られており、タイプI-FまたはタイプI-Fv CRISPR-Casシステムが利用された例は無かった。

 中山大学を主とする研究グループは今回、Pseudomonas aeruginosaのタイプI-F Casシステムに転写活性化ドメインを融合し、ヒト細胞での遺伝子転写活性化 [*]を実現した。
[*] 論文中では使用されていないが、転写活性化ツールということで、ブログ投稿のタイトルおよび以下の文中でCRISPRaを使用した。
  • クラス1タイプIシステムにて、マルチサブユニットタンパク質とcrRNAの複合体CascadeがDNAに結合し、Cas3が外来遺伝子を分解するなどの分子機序が知られている [P. aeruginosaのCascade (PaeCascade)の遺伝子構造、構成、および転写活性化因子VPRの融合についてFig.1参照]
  • HEK293細胞において、外来遺伝子 (GFP) と内在遺伝子 (HBB, HBG1/2, SOX2, OCT4, IL1B, および IL1R2)のCRISPRaを実現した。
  • Cascade CRISPRa殆どの場合、タイプI−FをベースにしたCRISPRaは、dCas9, dAsCas12aおよびEcoCascade (タイプI-E)をベースにしたCRISPRaよりも転写活性化が強力であった [Fig 3の一部引用右図参照]。
  • crRNAを伸長 (26 ntから56ntの範囲)することで、転写活性化が亢進した。
  • 単一ベクターに用意したcrRNAアレイを利用することで、転写活性化の多重化を実現した。
  • タイプI-Fシステムは、オフターゲットサイトの転写活性化を伴わなかった。
  • 当初、Shewanella putrefaciensのタイプI-FvのCascade (SpuCascade)も取り上げたが、GFPの転写活性化を実現できなかったことから、全ての実感をタイプI-F PaeCascadeで行う結果となった。SpuCascadeとPaeCascadeのサブユニット構成には違いがあり、同じタイプIシステムのCascadeであっても機能にも違いが現れたことになる。