[出典] "A Genome-wide CRISPR Screen Reveals a Role for the Non-Canonical Nucleosome-Remodeling BAF Complex in Foxp3 Expression and Regulatory T Cell Function" Loo CS,  Gatchalian J [..] Hargreaves DC, Zheng Y. Immunity 2020-07-07 
[crisp_bio注] 本記事は、bioRxiv版に準拠した「CRISPRメモ_2020/03/09-2 [第4項] ゲノムワイドCRISPRノックアウトスクリーンにより、TregにおけるBRD9を帯びた非標準的BAF複合体の機能を同定」の改訂版に相当; 続いて、同CRISPRメモの関連記事 「5. マウス初代Treg細胞のプール型CRISPR機能喪失スクリーンにより、Tregのマスター転写因子Foxp3の"ユビキチン・スイッチ"を発見」を転載

 Foxp3は制御性T細胞 (Treg)の分化と機能を調節する中心的転写因子である。Salk InstituteとUCSDの研究グループは今回、マウス初代Treg細胞を対象とするCRISPR Cas9 KOスクリーンにより、Foxp3の活性を亢進または抑制する因子群の同定を試みた。
  • Foxp3を制御する因子群は、SWI/SNFヌクレオソーム・リモデリング複合体とSAGAクロマチン修飾複合体のサブユニットをコードする遺伝子群に集中していた。
  • 3種類のSWI/SNF複合体の中で、Brd9を帯びた非標準 (non-canonical)BAF複合体 (ncBAF)がFoxp3遺伝子の発現を亢進し、一方で、PBAF複合体が抑制した。
  • In vitroで化合物によりBrd9を分解するとFoxp3タンパク質の発現とTregの活性が抑制された。
  • Brd9をノックアウトしたTregを移植したマウスin vivoにて、Brd9ノックアウトが、炎症性腸疾患を悪化させ、また、腫瘍免疫応答を亢進し腫瘍増殖を抑制することを同定した。
  • Foxp3の標的遺伝子群への結合は、Brd9に依存する:Brd9が、Foxp3の標的遺伝子群のサブセットへの結合を促進しひいてはサブセット遺伝子群の発現を促進した。
 ncBAFはTregの活性調節に適した標的である。

[以下、CRISPRメモ_2020/03/09-2から転載]

5. マウス初代Treg細胞のプール型CRISPR機能喪失スクリーンにより、Tregのマスター転写因子Foxp3の"ユビキチン・スイッチ"を発見
[出典] "CRISPR Screen in Regulatory T Cells Reveals Ubiquitination Modulators of Foxp3" Cortez JT, Montauti E [..] Marson A, Fang D. (bioRxiv 2020-02-27Nature 2020-04-29
  • UCSFを主とする研究グループは今回、Foxp3の発現を亢進または阻害する遺伝子を同定するために、~490種類の核内因子を標的とするスクリーニングから、Foxpの発現を亢進する因子 (クロマチン修飾SAGA複合体の脱ユビキチン化モジュールのメンバーであるUsp22とAtxn31)と抑制する因子 (E3ユビキチンリガーゼの一種Rnf20)を同定した。
  • Treg特異的にUsp22をノックアウトしたマウスでは、Foxp3タンパク質レベルの低下を介して、Tregの免疫抑制能が抑制されて自己免疫応答が誘導され、同時に、腫瘍増殖が抑制された。また、Treg特異的にRnf20をノックアウトするとUsp22欠損Tregで不全であったTregの免疫抑制能が回復した。以上、Tregにユビキチン・スイッチが存在することが明らかになった。