2020-11-22 関連crisp_bio記事へのリンクを追加: 2020-11-20 新型コロナウイルス:アストラゼネカのワクチン高齢者にも有効
2020-07-29 記事タイトルを「新型コロナウイルス・ワクチン:英国と中国、第3相試験に進む根拠をLancetに発表」から変更
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1. オックスフォード大学とアストラゼネカのChAdOx1-nCoV
[出典] Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single-blind, randomised controlled trial. Folegatti PM, Ewer KJ [..] Pollard AJ [on behalf of the Oxford COVID Vaccine Trial Group]. Lancet 2020-07-20

 チンパンジーのアデノウイルスワクチンベクター (ChAdOx1)に新型コロナウイルスのスパイクタンパク質配列を改変して導入したワクチンChAdOx1 nCoV-19の安全性、反応原性 (副作用)および免疫原性を測る第1/2相単盲検 (single-blind) (ClinicalTrials.gov, NCT04324606)からの中間報告
  • ランダム選択に基づいて、参加者の半数にそれぞれChAdOx1 nCoV-19と髄膜炎菌ワクチン (MenACWY)*を5×1010粒子投与し、単回投与と2回投与の経過を比較した (*ChAdOx1 nCoV-19による副作用が参加者の意識に与える影響を相殺するためにコントロールとして採用)。
  • ChAdOx1 nCoV-19投与グループには、注射部位の痛み、熱っぽさ、寒気、筋肉痛、頭痛および不快感などの局所的および全身性副作用が見られたが、これらに対しては解熱鎮痛薬パラセタモルの投与で対処可能であった。また、第3相試験への展開の障害になるような重篤な有害事象は発生しなかった。
  • スパイクタンパク質に対して特異的なIgG抗体のレベルは、単回投与したほぼ全員で28日目まで上昇し56日間レベルが維持された。2回投与 (0日と28日)では、抗体レベルがさらに上昇し、COVID-19回復者のレベルのほぼ中央値に達した。
  • 中和抗体応答は2回投与グループ全員に見られたが、力価は測定法に依存して変動した。
  • SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的なエフェクターT細胞が、7日目から見られ14日目にピークに達し、56日間維持されたが、2回投与によるブースター効果は見られなかった。
  • この第1/2相試験については、投与後1年間経過を追跡し、また、今後、治験の対象を高齢者などハイリスクの参加者など、多様な集団へ対象を拡げていく。第3相試験には、ブラジル、南アおよび英国で着手した。
  • 第2/3相治験 NCT04400838 (Investigating a Vaccine Against COVID-19 Phase 2/3)
2. カンシノ・バイオロジクス (CanSino Biologics)のAd5-nCoV
[出典] Safety, tolerability, and immunogenicity of a recombinant adenovirus type-5 vectored COVID-19 vaccine: a dose-escalation, open-label, non-randomised, first-in-human trial. Zhu FC, Guan XU [..] Wang XH, Chen W. Lancet 2020-07-20

 中国において6月末に人民解放軍を対象とする限定的使用を認められたワクチンの、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験第2相試験の中間報告がLancetに掲載された (ClinicalTrials.gov, NCT04341389)。
  • 1 × 1011ウイルス粒子投与(253名)または5×1010ウイルス粒子投与 (129名)に対してプラセボ 126名の3グループからなる第2相試験における投与後28日での判定結果を報告した。
  • 投与量に応じて、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインに対する抗体が96%・97%に見られ、中和抗体が59%・47%に見られ、 IFNγ-ELISpotから、SARS-CoV-2特異的T細胞応答が90%・88%に見られた。また、細胞性応答または液性応答が、95%・91%に見られた。
  • 重篤な有害事象は見られなかったが、予想と異なり、5×1010ウイルス粒子の方が1 × 1011ウイルス粒子よりも安全性が高く、また、1011ウイルス粒子とほぼ同等の効果を示すことから、第3相試験を5×1010ウイルス粒子で進めることになった。
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