[出典] Necroptosis-based CRISPR knockout screen reveals Neuropilin-1 as a critical host factor for early stages of murine cytomegalovirus infection. Lane RK [..] Kaiser WJ, Guo H [..] Kaiser WJ. PNAS 2020-08-03.

 ヒト・サイトメガロウイルス (HCMV)のヒト細胞との相互作用については、マウスCMV (MCMV)をサロゲートとする実験によって解析が進んできたが、CMVの感染に関与する宿主因子群の包括的理解には至っていなかった。UT San Antonioを主とする研究グループは今回、宿主の細胞死の経路に注目したゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーンによる宿主因子の網羅的同定を試みた。

背景: CMVが産生する宿主細胞の細胞死を抑制するタンパク質
  • CMVはヘルペスウイルスの一種 (ヘルペスウイルス5型)である。ヒト細胞はウイルス感染に対して、細胞死を介して感染の拡大を防ぐ機構を内在している。一方で、二本鎖DNAウイルスであるヘルペスウイルスは、宿主細胞内在の細胞死の経路を阻害する因子を産生することで、感染細胞内での増殖と新たな宿主細胞への感染を維持する機構を備えている。
  • 宿主細胞のアポトーシスに対しては、アポトーシス促進性caspase-8の阻害因子を産生し、ネクロプトーシス(necroptosis)に対しては、ZBP1(DAIやDLM-1としても知られている)タンパク質阻害を介して受容体共役タンパク質キナーゼ (RIPK)-3の活性化を阻害するタンパク質 (M45)を産生する。
成果概要
  • M45変異型 (M45mut)を帯びたMCMVに対して、安定したネクロプトーシス応答を示すマウス上皮細胞株SVEC4-10をプラットフォームとして、ゲノムワイドCRISPR/Cas9 KOスクリーンにより、MCMVの感染に必須な宿主因子の同定を試みた [論文 Fig. 1  参照]。
  • MCMV感染に決定的な宿主因子として、血管内皮細胞増殖因子 (Vascular endothelial growth factor: VEGF)とセマフォリンの受容体のニューロピリン1 (Nrp-1)を同定した。
  • Nrp-1はこれまでMCMVとの相関が示唆されてこなかった因子であり、また、CRISPR KOスクリーンにヒットした因子の中で唯一の細胞表面タンパク質であった。
  • 続いて、Nrp-1のKOにより、ウイルス遺伝子の初期の発現が低減し、内皮細胞、線維芽細胞およびマクロファージへの感染が抑制されることを確認した。
  • Nrp-1の細胞外ドメインがMCMVの感染を仲介することから、ウイルスを可溶性Nrp-1とプレインキュベーションすることで、宿主細胞へのウイルスの付着が低減し、感染が劇的に阻害されるとも見出した。
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