2020-09-14 国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那賢志感染症専門医のブログ「症状、予防、経過と治療… 新型コロナウイルス感染症とは? 現時点で分かっていること(9月13日時点)」へのリンクを追加: ブログ中程に,「新型コロナウイルス感染症の典型的な経過」がまとめられている (以下は、忽那賢志医師のツイートへのリンク)。

[出典] PERSPECTIVE: How does SARS-CoV-2 cause COVID-19? Matheson NJ, Lehner PJ (U Cambridge). Science 2020-07-31

 このPERSPECTIVE記事の挿入図に、SARS-CoV-2の上気道細胞への感染からCOVID-19の症状進行まで、SARS-CoV-2がそのスパイクタンパク質を介してヒト細胞内在の各種プロテアーゼを利用しながらヒト細胞に接着・融合・侵入し [*1]、その後、進行する事象が三段階にまとめられている:
[*1] crisp_bio 2020-06-15 新型コロナウイルス感染に関与する新たな宿主因子ニューロピリン 
  1. 感染後無症状の時期: 上気道感染した初期段階では、無症状 (asymptomatic) [*2]であるが、感染者はウイルスを放出する。
    [*2] 無症状のままウイルス非検出になる場合と、後に発症する場合があり、前者をasymptomatic、後者をpresymptomaticと峻別した上で議論することが増えている。
  2. 有症化: 下気道感染し症状が顕在化した感染者の90%には間質性肺炎 (pneumonitis)が見られる。
  3. 重症化: 下気道感染者の中の一部が有症化してから7~10日で重症化する。過剰なサイトカインの放出 (サイトカイン・ストーム) [*3] 血管内に侵入に続く血栓形成、さらに多臓器不全に至る。
    [*3] 肺の線維化や心損傷など重篤かつ後遺症をもたらすCOVID-19は、新型コロナウイルスが誘導する過剰な免疫応答の結果であるサイトカイン・ストームに加えて、新型コロナウイルスが各臓器に直接およぼす損傷が複合した結果という見方が拡がってきている: crisp_bio 2020-07-18 新型コロナウイルスがヒトの各器官に与える損傷を、ヒトの気管, 肺, 血管, 腎臓, 肝臓, 腸のオルガノイドで見た9f7e9b32
 このScience PERSPECTIVEの挿入図は、一連の塩基エディター (CBE, ABEおよびPE)の開発で知られるDavid R.Liu教授が集約した"COVID-19症状の時間経過"の図の'体内図'に相当する [右図参照]。

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