[出典] A programmable sequence of reporters for lineage analysis. Garcia-Marques J [..] Lee T. Nat Neurosci 2020-07-27; [News & Views] CRISPR Rube Goldberg machines for visualizing cell lineage. Carey CM, Gagnon JA. Nat Neurosci 2020-08-07
[参考文献] Unlimited Genetic Switches for Cell-Type-Specific Manipulation. Garcia-Marques J [..] Lee T. Neuron 2019-08-05; PREVIEWS: La CaSSA da Drosophila: A Versatile Expansion of the Tool Box. Kanca O, Bellen HJ. Neuron 2019-10-23.

背景
  • Jorge Garcia-Marquesらは、2019年に神経幹細胞からの特定の細胞型が分化していく過程 (細胞系譜)の可視化や、特定の細胞系譜に特異的な遺伝子の同定を可能とする遺伝子トラップを実現するシステムCaSSANeuron誌 [参考文献]に発表していた。
  • CaSSAは、Cas9のCaと一本鎖アニーリング(single-strand annealing)のSSAに由来し、スイッチとして機能するカセット (Switch cassette)を蛍光タンパク質をコードする配列に割り込ませた蛍光タンパク質発現コンストラクト (以下、レポーター・コンストラクト)、組織または細胞型特異的プロモーターを帯びたCas9発現カセット、および、U6プロモーターを帯びたgRNA発現カセットの3要素で構成される。
  • レポーター・コンストラクトは、蛍光タンパク質の一部を重複させ (反復させ)、その間に、gRNA の標的配列 (Target)を挿入した構成であり、蛍光タンパク質は初期状態では発現しない。論文では例えば、mCherryのレポータ・コンストラクトは、mCher Target - rryと表記されており、このr - Tatget - rが、Switch cassetteにあたる [参考論文の図1参照]
  • レポータ・コンストラクトは、Cas9-gRNAの存在下でTargetが切断され人工的反復配列に基づくSSA過程による修復を介して、蛍光タンパク質を発現するに至る。すなわち、このSwith cassetteはONスイッチとして機能する。
成果概要
  • Jorge Garcia-Marquesらは今回、先行研究のCaSSAのONスイッチに加えてOFFスイッチも設計し、CaSSAの標的として蛍光タンパク質の他にgRNAも加えることで、トリガーとするgRNAから始まって、予め設定した順にONスイッチそしてまたはOFFスイッチが連鎖させていく手法を開発し [出典 Fig. 2参照]、CLADES (cell lineage access driven by an edition sequence)として発表した。
  • CLADESを前駆細胞に適用することで、分化の過程で子孫細胞に各蛍光タンパク質の色または重ね合わせが順次蓄積されていくことから、細胞系譜の可視化が実現する 。
  • また、CLADESは、熱ショックによってトリガーを掛けることで、時間的制御を可能とする。
  • CLADESの性能は、ショウジョウバエの神経幹細胞および生殖細胞系列の分化過程の解析と操作で実証した。