[出典] "Optimization of S. aureus dCas9 and CRISPRi elements for a single adeno-associated virus that targets an endogenous gene" Backstrom JR [..] Rex TS. Molecular Therapy Methods & Clinical Development. 2020-09-06

 CRISPRiシステムは遺伝子治療剤として可能性を秘めているが、FDAが臨床応用を承認した唯一のウイルスベクターであるAAVでデリバリーするには、そのサイズが大きすぎる。Vanderbilt University Medical Centerの研究グループは今回、この課題を解決した:
  • KRAB-dCas9の核移行を誘導する核局在化シグナル (NLS)として、これまでのSV40をグリシン・リッチでフレキシブルなペプチド (25アミノ酸)リンカーを介して結合する方式から、c-Mycをリジットなヘリックスペプチド (17 アミノ酸)リンカーを介して結合する方式に替えることで、核移行効率を7%から27%へと向上させた (ヒト網膜色素上皮細胞株ARPE-19で確認)。
  • KRABをdCas9のN末端とC末端への結合と内部への挿入を比較し、抑制効果が最も高いN末端結合を選択 (N-KRAB)した。
  • gRNAのプロモーターを最適化し、肝細胞におけるKRAB-SadCas9発現用のミニ・プロモーターを採用した。
  • こうして単一のAAVでデリバリー可能であり肝細胞を標的とするCRISPRiシステムを作出した。
  • このCRISPRiは、in vitro で、Pcsk9 mRNAと産物タンパク質を低減した。
  • マウスに、肝細胞指向性のAAV2/8ベクターでデリバリーしたCRISPRiは、マウス肝細胞の核に局在し、in vivoで、Pcsk9 をノックダウンし、血清内タンパク質のレベルを30%低減した。