2020-09-22 同じグループの先行投稿論文へのリンクを追加 [文末参照]
2020-09-21 初稿

[出典] "An ultrasensitive hybridization chain reaction-amplified CRISPR-Cas12a aptasensor for extracellular vesicle surface protein quantification" Xing S, Lu Z, Huang Q [..] Deng M, Li W. Theranostics. 2020-08-13.
https://doi.org/10.7150/thno.49047
[注] 論文タイトル中のaptasensorは"aptamer + sensor"からの造語

 腫瘍由来細胞外小胞 (Tumor-derived extracellular vesicle: TEV)が帯びているタンパク質バイオマーカーは、癌の診断と予後判定に有用である。中山大学を主とする研究グループは今回、標題の新たなTEV表面のタンパク質腫瘍マーカー検出法を開発し、apta-HCR-CRISPRアッセイとして発表した [Figure 1引用下図参照]:apta-HCR-CRISPR

アプタマー (以下, apta)を利用するELISA (apta-ELIZA)とHCR (Hybridization chain reaction)
  • 細胞外小胞 (EV)のマーカとされる3種類のテトラスパニン (CD63; CD81; CD9)に対する抗体で修飾したビーズによって、TEVを捉え、TEV表面上の標的マーカに結合するapta, スペーサ, およびHCRを起動するssDNAからなる開始ストランドH0にて、標的マーカを捉える。
  • 標的マーカが存在する場合は、抗体/マーカ/H0の複合体が形成され、H0から、2種類の核酸のヘアピン構造が順次開きハイブリダイゼーションが繰り返され (図の中ではH1とH2)、H1/H2をユニットする繰り返しからなる長いDNA鎖 (以下、アッセンブリ)が生成される。H1/H2ユニットをCas12a-crRNAが認識・結合可能な配列と設計しておくことで、H0のシグナルが増幅されることになる。
  • 標的マーカが存在しない場合は、洗浄の過程で、核酸は全て洗い流される。
DETECTR流シグナル増幅 
  • Cas12a-crRNAがアッセンブリ中のH1/H2ユニットに結合すると、Cas12aは無差別にssDNAを切断するコラテラル切断活性を発揮する。
  • Cas12aで切断されることで、消光されていたssDNA蛍光レポータが発光し、タンパク質マーカを定量可能になる。
  • Cas12a-crRNAの多重結合とssDNA蛍光レポータの発光の相乗効果で、より高い増幅率が得られる。
実証実験Fig. 3
  • ヌクレオリンとPD-L1をモデルとして検証し、apta-ELISAとapta-HCR-ELISAのそれぞれ104倍と102倍の感度, LoD値 102粒子/μL, を得た [Figure 3引用右図参照]。
  • また、50μLの血清を検体として、ヌクレオリン陽性TEVsによる鼻咽腔癌診断 , および, 抗PD-1免疫療法を受けているステージIVの癌患者の治療効果をPD-L1陽性TEVsによる治療効果モニタリングが可能なことを示した。
同じグループからの先行研究成果 "
aptamer-CRISPR/Cas12" [ジャーナル刊行は後]