[出典] "Mechanisms for target recognition and cleavage by the Cas12i RNA-guided endonuclease" Zhang H, Li Z, Xiao R, Chang L. Nat Struct Mol Biol 2020-09-07

 2018年にScienceオンラインで報告されたCas12iは、クラス2タイプV CRISPR-Casエンドヌクレアーゼであり、主に基質の二本鎖DNA (dsDNA)の非標的鎖 (crRNAと相補的ではないDNA; 鎖non-target strand, NTS)を切断するニッカーゼとされ [*]、高精度なゲノム編集に利用できる可能がある。Cas12iはまた、Cas12aと同様に、自身のpre-crRNA鎖からcrRNAを生成する特徴も帯びており、ゲノム編集の多重化への利用も期待できる。

 Cas12iにはCas12i1とCas12i2の2種類が存在するが、Purdue Universityの研究チームは今回、Cas12i1の標的認識と切断の機構を明らかにすることを目的として、Cas12i1-crRNA二者複合体 [EMD-21551, PDB 6W62; 3.9 Å分解能]Cas12i1-crRNA-dsDNA三者複合体 [EMD- 21552, PDB 6W64; 3.9 Å分解能]、加えて、不活性化したCas12i1 (E894A)とcrRNA-dsDNA三者複合体の構造 [EMD-21541, PDB 6W5C; 2.9 Å分解能]を、クライオ電顕法で再構成した。[注 Cas12i1-crRNA-dsDNA三者複合体の全体構造についてFig. 1参照]
  • Cas12i1は、自身のcrRNA上の長さ7 ntのシード配列を溶媒へ露出し、crRNAとcrRNAに相補的なdsDNAの標的鎖 (target strand, TS)とのハイブリダイゼーションを介して、大きなコンフォメーション変化を伴いながら2段階で活性化する。
  • すなわち、Cas12i1は、crRNAとTSのヘテロ二本鎖が14bpに至ったところでニッカーゼ活性を発揮してNTSを切断し、さらに、ヘテロ二本鎖が28-bpに至るとTSを切断する。Cas12a, Cas12bおよびCas12e, 加えてCas9が、20 bpのヘテロ二本鎖形成でdsDNAの切断に至るのと比較して、dsDNAの切断にはより長いヘテロ二本鎖形成を必要とすることから、Cas12i1の高精度なゲノム編集を期待できる。
[*] CRISPRメモ_2018/12/07 [第1項] クラス2タイプV CRISPR-Casシステムの新たなエフェクター/サブタイプとそのDNA/RNA切断活性の同定 - Cas12iは、crRNAスペーサに相補的なDNA鎖と非相補的なDNA鎖に対する活性が著しく異なり, dsDNAニッキングを誘導するニッカーゼである。