[出典] "Cutting Edge: CRISPR-Based Transcriptional Regulators Reveal Transcription-Dependent Establishment of Epigenetic Memory of Foxp3 in Regulatory T Cells" Cameron J, Martino P, Nguyen L, Li X. J Immunology. 2020-11-02

 制御性T細胞 (Treg)は、Foxp3遺伝子のGCリッチなイントロンエンハンサーCNS2のDNA脱メチル化を介してFoxp3発現をエピゲノム記憶として維持する。しかし、CNS2はFoxp3発現とは独立に脱メチル化されるとされていたことから、Foxp3発現のエピゲノム記憶が成立する機序は明確になっていなかった。

 Tufts Graduate School of Biomedical SciencesとTufts University School of Medicineの研究チームは今回、マウスにおいて、CRISPR技術により、Foxp3転写活性化とCNS脱メチル化の間に予想外の因果関係を発見した:
  • CRISPRaによるFoxp3の転写活性化が、CNS2の脱メチル化を促進する。
  • 誘導性TregにおいてFoxp3 転写活性化を維持すると、CNS2の脱メチル化が促進され、Tregとして安定し免疫抑制機構が維持される。
  • CRISPRによるFoxp3のサイレンシングが、CNS2の脱メチル化を消滅させた。
 Foxp3転写活性化がCNS2の脱メチル化を促進する機構は、Tregをベースとする新たな療法への手がかりととなり、また、免疫遺伝子発現のエピゲノム 記憶確立の一般的機構と考えられる。