(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/14

  1. [論文] CRISPR/Cas9に依る受精卵における染色体工学:Allan Bradley (Wellcome Trust Sanger Inst.)
    • ヒトの疾患モデルとしてのマウス作出の観点から、大領域(1 M-bpの長さのゲノム領域)の削除と逆位および効率は低いが同程度の複製を、CRISPR/Cas9の要素を直接受精卵に注入することによって実現.実験対象は、C57BL6/Nとチロナーゼ遺伝子座.
  2. [論文] CRISPR/Cas9を介した相同組換えによって筋原性因子5(MYF5)のレポーターをノックインしたヒトiPSCの樹立と解析:Radbod Darabi (UT Health Science Center at Houston)
    • 相同組換えとターゲッティング効率の向上を目指して、Cas9(D10A)ニッカーゼ変異体(Cas9n)一組を利用するダブルニッキング法を利用した.
    • MYF5遺伝子のストップコドンの直前に2A-GFPレポーターを導入し、また、Cas9-VP160 (dCas9アクチベーター)を利用して内在性MYF5の発現を誘導し、MYF5-GFPの共発現を実現した.
    • レポーターを組み込んだヒトiPSCをembryoid body法によって分化させ、MYF5-GFP+筋原性細胞を選別濃縮・解析した.
  3. [ニュース] DuPont、CRISPRを積極展開:Daniel Grushkin
    • DuPontはCRISPR/Cas9技術について、2015年6月の6月のVirginijus Siksnys (Vilnius University) とのライセンス契約に続いて、10月にCaribou Biosciencesとアライアンスを組み、分担してCRISPR/Cas9による作物改変に取り組み始めた.
    • BroadとUniversity of Californiaとの特許係争や、CRISPR/Cas9による遺伝子改変作物に対する規制といった不確定要素があるが、DuPontは、CRISPR/Cas9によって大豆ならびにトウモロコシに除草剤クロルスルフロン耐性を付与した論文を発表し、CRISPR/Cas9技術による作物改変に積極的姿勢を示している.
    • ニュースは、DuPont Pioneerの研究開発担当副社長Neal Guttersonのコメント「交配による開発した新品種を市場に出すまでには7〜10年、従来のGMOでは12〜15年、を要するが、ゲノム編集技術を利用すれば、それを5年程度に短縮可能」で締められている.