[出典] Huang Z, Nair M. “A CRISPR/Cas9 guidance RNA screen platform for HIV provirus disruption and HIV/AIDS gene therapy in astrocytes.” Sci Rep. 2017 Jul 20;7(1):5955.

[背景]
  • エイズは、HIVの逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の多剤併用療法やHIVがヒト細胞に融合する過程を阻害するペプチドの開発などにより、慢性疾患として扱えるに至ったが、完全寛解は実現していない。その主たる原因は、持続的に感染する能力を秘めた休眠状態のHIVが潜伏する細胞(リザーバ)が、ヒト脳のアウトロサイトを含むヒト体内各所に存在することにある。
  • CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術が誕生してすぐ、2013年にCRISPR/Cas9によりHIV-1プロウイスを破壊する試みがなされ、その後、HIVリザーバ内のHIVプロウイスを根絶する試みが、in vitro, ex vivo及び動物モデルが行われてきた。
  • 一方で、HIVプロウイスの大きさが〜10 kbに及ぶにもかかわらず、これまでの研究で試されたgRNAの種類はごく限られていたために、使用されたgRNAの評価が難しい。加えて、HIVリザーバからHIVプロウイルスを除去あるいは破壊するに効果的なgRNAを同定するための簡便で高速なスクリーニング法も存在していなかった。
[成果]
  • 今回、アストロサイト内のHIVを標的とする効果的なgRNA候補を同定する簡単で高速なスクリーン可能なプラットフォームを開発した。すなわち、Cas9を安定に発現するアストロサイトを作出し、続いてVSVG pseudotyped RGH (Red–Green-HIV1, a doubly fluorescent HIV1 reporter)を送達し、Cas9とHIVレポーターを発現するアストロサイト・クローンを確立した。
  • HIVのLTR, nef, pol 及びtat遺伝子を標的とするgRNAs(gL/gN/gP/gT)をWU-CRISPRにより設計し、CRISPRdirectでオフターゲット作用が想定されないgRNAsを選択し、今回開発したトランスジェニック・アストロサイトで、gRNA単独と、2つ組み合わせた場合の活性を評価した。
HIV gRNA screen
  • 現在、HIV/AIDS患者にとって深刻な脅威であるNeuroAIDS治療には、アウトロサイト、ミクログリア及びマクロファージを含む脳内のリザーバに対処する必要がある。今後、Cas9とgRNAsを磁気/電磁気ナノ粒子を利用して血液脳関門を超えて脳へ送達し、in vivoでのHIVプロウイルスの根絶を目指す。