[出典] Kurihara T, Fukuhara T, Ono C, Yamamoto S, Uemura K, Okamoto T, Sugiyama M, Motooka D, Nakamura S, Ikawa M, Mizokami M, Maehara Y, Matsuura Y. “Suppression of HBV replication by the expression of nickase- and nuclease dead-Cas9.” Sci Rep. 2017 Jul 21;7(1):6122.
  • B型肝炎ウイルスは、環状の二本鎖DNAである共有結合閉環状DNA(cccDNA)として核に存在し、HBVゲノムの逆転写を阻害するヌクレオシド/ニクレオチド・アナログ療法では、HBVを感染細胞から完全に除去することが困難である。IFN-α療法は、完全寛解をもたらす場合があるが、副作用による限界がある。一方で、CRISPR/Cas9によるHBVゲノム切断が報告されている。
  • CRISPR/Cas9ゲノム編集を臨床に展開するには、しかるべき標的以外のゲノム領域を切断するオフターゲット作用の問題を解決する必要がある。今回、オンターゲット編集の効率を高め、オフターゲット編集を抑制する手法として開発されたCas9のヌクレアーゼ活性を担うRuvCとNHNドメインのどちらかを不活性化するCas9ニッカーゼによるHBV切断とHBV複製抑制を、Cas9およびdCas9によるゲノム編集の効果を比較した。
  • Cas9ニッカーゼと2種類のsgRNAsを組み合わせることで(原論文Figure 1-B)、HBVゲノム切断、in vitroでのウイルス蛋白質の発現とHBV複製の抑制を実現し、マウス肝臓におけるHBVゲノム切断も実現した。HBV suppression 1
  • 興味深いことに、ゲノムを切断しないdCas9もsgRNAsペアを利用することで、in vitroでHBV複製を抑制した。d-Cas9は、sgRNAを介してHBVゲノムに結合することでHBV mRNAの発現を阻害し、HBV複製を抑制する。