(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/03)
- [論文] プロウイルスDNA切断を生き延びるHIV-1:Atze T. Das; Ben Berkhout (U. Amsterdam)
- 最近、感染細胞のDNAに入り込んだHIV-1のプロウイルスDNAを、CRISPR/Cas9によって切断した報告が続いている.
- 今回、Cas9とウイルスを標的とするgRNAsによってHIV-1複製を強力に阻害することができるが、ウイルスは急速かつ継続的に阻害を免れることを見出した.
- シーケンシングの結果、阻害を免れたHIV-1変異体のCas9/gRNA切断サイトの周辺に、NHEJに特徴的な、ヌクレオチドの挿入、欠失および置換が起こっていることが明らかになった.この点、CRISPR/Cas9をHIV-1治療に応用するにあたって考慮する必要がある.
- [論文] 抗体産生に向けた植物懸濁細胞のゲノム編集:Marc Boutry (Université Catholique de Louvain)
- 植物懸濁細胞は抗体などの薬剤産生のホストとして有利な点があるが、プロテアーゼの不活性化や糖鎖修飾のヒト化などによって質量を向上させる必要がある.このために今回、タバコBY-2細胞株の懸濁細胞においてCRISPR/Cas9による遺伝子の不活性化を試みた.CRISPR/Cas9による植物のゲノム編集の前例はあるが、懸濁細胞への適用は初めてである.
- 赤色蛍光タンパク質(mCherry)を発現しているトランスジェニック細胞株に、mCherry制限酵素部位と除草剤ビアラホス耐性遺伝子bar を標的とする3種類のgRNAsとCas9を導入した.その結果、標的に挿入欠失(indelsg)に加えてDNA断片の欠失も生じることを見出し、相同組換えを利用した懸濁細胞の遺伝子編集の可能性を示すことができた.
- [論文] 新奇な制御様式をもたらすシスエレメントを発見:Yin Shen (UCSF); Bing Ren (UCSD)
- ヒトES細胞(hESC)において、Oct-4をコードするPOU5F1 遺伝子を含む〜1Mbp範囲のトポロジカル関連ドメイン
(topologically associated domain;TAD)における174種類の制御エレメント候補を、1,962種類のsgRNA(候補エレメントあたり平均11種類のsgRNA)とCas9によるハイスループットゲノム編集によって、機能を評価した. - hESCにおけるPOU5F1 の転写に必須の2種類の古典的制御エレメント、プロモーターと近位エンハンサー、を同定.
- POU5F1 にこれまで知られていなかった制御様式をもたらすエレメント、Tempエンハンサー、を発見した.POU5F1 転写を一時的に停止したのち、数回の細胞分裂を経て、転写を完全に復旧するTempエンハンサーは、他の遺伝子の制御エレメントにも存在すると考えられる.
- ヒトES細胞(hESC)において、Oct-4をコードするPOU5F1 遺伝子を含む〜1Mbp範囲のトポロジカル関連ドメイン
- [論文] 作物への非遺伝子組換えによる抗ウイルス性付与:Amit Gal-On (Agricultural Research Organization, Volcani Center)
- キュウリ(Cucumis sativus L.)のeIF4E 遺伝子のN末端とC末端を標的とするCas9/sgRNAによって、T1世代のeIF4E に小規模な欠損とSNPsが生じた一方で、オフターゲット編集は検出されなかった.
- 非遺伝子組換え型のヘテロ変異体から生成したホモ接合T3世代は各種ウイルスに対する免疫反応や抵抗性を獲得していた.また、成長過程での形態は正常であった.
- CRISPR/Cas9によって、非遺伝子組換え型で、発生成長に異常を生じることなく、長期間を要する戻し交配することなく、作物に抗ウルス性を付与
コメント