1.ヒト胚ゲノム編集:米・韓・中の共同研究チーム、心疾患病因変異の高効率・高精度修復を実現
[注] 2017/08/24、bioRxivに本論文に対する「Contradictory Results」が投稿され、波紋が広がっている(ブログ「
CRISPR/Cas9ヒト胚ゲノム編集による心疾患病因変異修復に疑義」参照)

  • Ma H  Belmonte JC, Amato P,  Kim JS, Kaul S,  Mitalipov S. “Correction of a pathogenic gene mutation in human embryos.” Nature. Published online 02 August 2017.
  •  [NEWS & VIEWS] Winblad N, Lanner F. (Karolinska Inst.)“Biotechnology: At the heart of gene edits in human embryos.” Nature. Published online 02 August 2017.
  • [NEWS] Ledford, H (Science writer). “CRISPR fixes disease gene in viable human embryos.” Nature. 548, 13–14 (03 August 2017).
  • ヒト胚ゲノム編集においては、ひときわ、オフターゲット編集のモザイク現象の抑止が必要とされてきた。研究チームは今回、着床前胚(第2減数分裂中期(Metaphase II)の卵母細胞)に、顕微授精(精子注入)と同時にCas9蛋白質、sgRNAおよびHDR修復ドナーを送達する手法を開発し、オフターゲット編集非検出と、モザイクの発生抑制を実現した:
  • 家族性肥大心筋症患者由来のiPSCにおいて、MYBPC3遺伝子変異を修復するCas9-sgRNAのコンストラクトを評価し、ヒト胚ゲノム編集に最適なコンストラクトを選定
  • 75個の卵母細胞から、ヘテロ型変異が修復されたMYBPC3WT/WT遺伝子を帯びた42個の胚と、16個の未修復MYBPC3WT/GAGT-indelを帯びた16個の胚を得た。すなわち、修復効率72.4%を達成した。
  • モザイク胚は、前者のうち1個であった。シーケンシングによる評価では、オフターゲット編集は非検出であった。
  • HDR修復は、意外にも、外来ドナーではなく、卵母細胞由来の野生型MYBPC3のコピーが利用され、HDRが卵母細胞内在のDSB修復機構によることが示唆された。従って、今回の手法をホモ接合型病因変異修復に適用するには課題が残る。
  •  [本研究は米国では種々の財団からの資金に拠り連邦予算を使用していないことから、ヒトゲノム胚編集に関する米国内のガイドラインには抵触しない。

[関連文献・記事]


2.[レビュー] CRISPR/Cas9ゲノム編集で得られるファウンダーマウス(F0)のフェノタイピング

  • Teboul L, Murray SA, Nolan PM. “Phenotyping first-generation genome editing mutants: a new standard?” Mamm Genome. First Online: 29 July 2017
  •  CRISPR/Cas9の胚ゲノム編集により、第2世代または第3世代へと交配を繰り返すことなく、ファウンダーマウス(F0世代)を遺伝子変異に対応する表現型を解析するコホートとして利用することが可能になった。しかし、CRISPR/Cas9で得られる遺伝的にモザイクなF0世代がフェノタイピングに適切なモデルか否かを検証しておく必要がある。
  • F0世代の胎児および成体のフェノタイピングの成果;F0フェノタイピングの限界;詳細解析の対象とする病因遺伝子のスクリーニングへの有用性と、適切なスクリーニング実施にあたり検討すべき事項;安定かつ定評ある変異系統を選択せず変異F0を利用する正当性検証が必要。